あたらし物語
―勝手に オリジナル映画 脚本 ―
オリジナル脚本コーナーにようこそ
どうぞひと味変った”あたらし物語”をお楽しみ下さい
沖縄出身の青年が、行きつけのゲーム店で潜在意識が創り出すという新しいゲームの世界に入り 込む。その世界では、沖縄防衛軍とアメリカ軍が激突!戦闘に巻き込まれた青年は、元同僚の防衛軍大尉、 女性同僚と共にシーサーロボットでアメリカ軍戦車と戦う羽目になる。 |
ゲームオブリュウキュウ
蔵 王路
登場人物
良カズオ
ゲームの女の子(リコ似)
加山リコ
警護隊員(A、B、C)
女子事務員
若者
おばあさん
武装警官A・B・C・D
機長
客室乗務員
乗客A・B・C・D・E
課長
沖縄軍・空港警備兵(モブ)
観光客(モブ)
沖縄軍・司令官
沖縄軍・参謀
沖縄軍・黒人隊長
自衛隊・沖縄基地警備兵A、B
沖縄陸上自衛隊・司令官
沖縄陸上自衛隊・隊員(モブ)
沖縄軍兵士(メキシコ、インド、アフリカ、ベトナムモンゴル、白人、沖縄・日本人)
沖縄軍・沖縄人隊長
沖縄航空自衛隊・司令官
沖縄軍兵士2名(インド・モンゴル)
照屋沖縄大統領
副大統領
幹部
首相(日本)
防衛大臣
財務大臣
秘書官
国土拡大計画㈱の男A,B,C
沖縄警察部長
警官(日本)A,B,C,D
米空軍沖縄司令官
米大統領補佐官
フランス大使
ロシア大使
中国大使
英国大使
スパイ(ロシア、中国、英国、仏国、米国)
永倉
永倉の部下(A、B、C、D)
各国大使(マダカスカル、ウガンダ、カメルーン、ブラジル他)
那覇警察署長
武装警官(モブ)
バスの運転手
デモ隊(モブ)
デモ規制警官部隊(モブ)
同・指揮官
那覇警察応援隊隊長
隊員(モブ)
デモ隊の老人
アナウンサー
武装独立反対派(モブ)
オリンピック委員会事務局長
スタッフ(A、B、C)
記者(A、B)
米軍基地司令官
同・中尉
米軍ヘリパイロット
射撃手
米軍偵察隊大尉
兵士A
安芸津大尉
国吉軍曹
米軍沖縄総司令官
将校
防衛軍・小隊長
ホテルの受付
自衛隊沖縄基地の隊員
沖縄防衛軍・兵士
自衛隊・攻撃隊隊長
通信兵
米軍海兵隊隊長
兵士1・2
自衛隊基地食堂・防衛軍兵士
自衛隊員A
米軍・MP隊長
部下モブ
琉球皇国塾長
男たち
アメリカ大使
米鎮圧軍・指揮官
将校
通信兵
兵士たち(モブ)
首里城防衛軍・兵士1,2、3
外務大臣
式典司会者
〇冬の住宅地(冬)
家々が並ぶ中の空き地に夕日が差している。
屋良カズオ、ダウンジャケットを羽織り住宅販売の旗の横でパイプ椅子に座って
スマホをいじっている。
カズオ、寒さに身震いして時計を見る。
住宅売り出しの旗を丸め自転車に乗って空き地を後にする。
〇渋谷駅近くのビルの不動産会社
カズオ、封筒の中身を覗きながら不動産会社から出てくる。
カズオ「ハー、寒空に7時間も座ってこんだけか・・・もう沖縄に帰る潮時かな」
〇渋谷駅前交差点
若者や外国人でごった返している。
信号が青に変わると交差点が人間で溢れ出し、カズオも押されるように渡り始
める。
〇ゲーム館ビル外観
ビルの外についているエレベーターが昇ってゆく。
乗っているのはカズオのみ。
〇同・バーチャルリアリティーゲーム店内
大きなモニター付きの椅子が新幹線の座席のように並んでいる。
女店員がカズオを案内してくる。
女店員「こちらのお席になります。どうぞ最新のバーチャルの世界をお楽しみください」
カズオ、すすめられた椅子に座りボタンを押す。
かわいい女の子(リコ似)が大型モニターに現れる。
女の子「こんにちわ!カズオさん!」
カズオ「やあ!また来ちゃったよ!迷惑じゃなかった?」
女の子「もう!迷惑なんて!カズオさんに会えなくてほんとに寂しかったんですから」
カズオ「最近稼ぎが少なくてね」
女の子「そんな悲しい事言わないで!今までの分まで楽しんで!」
カズオ「よーし!ラストゲームだ!過激に行くぞ!」
ゴーグルをかけて、スタートボタンを勢いよく押す。
カメラ、ゴーグルの中に入ってゆく。
〇ゴーグルの中
暗闇
女の子の声「カズオさん?」
カズオの声「・・・ど、どうしたんだ?頭の中で映像がぐるぐる舞ってる・・・これ、今
までのゲームと違うんだけど!」
女の子の声「フフフ、カズオさんの思い通りの人生を満喫してきてくださいね」
カズオの声「あ、あ、あ~・・・」
と、目前に宇宙空間が現れ、緑の惑星が手前に猛スピードで迫ってくる。
カズオの声「ウワア~」
〇有楽町駅前・沖縄観光東京事務所
緑の空に白い太陽がぎらぎら照っている。
カズオハンカチで顔を拭きながら入ってくる。
カズオ「ただいま」
事務員「たいみそーちー!いえっ!お帰りなさい」
カズオ「こう暑くちゃオリンピック対策も役にたたんだろうな」
事務員「みなさん、こんな蒸し暑い東京に居ないで沖縄に来れば良いのにね。今沖縄は暇
で大変よ」
カズオ「アハハ、オリンピックが終わるまでの辛坊さ」
スマホの発信音。
カズオ、ポケットからスマホ取り出しメールを見る。
スマホの画面(重大案件あり今日中に戻って来い!・・・課長)
カズオ「オイオイ、無理だって!いくら何でも今日中ってのは無茶すぎだろ?」
〇羽田空港・日の出前
カズオ、スマホを操作し、ぼやきながらロビーに入ってくる。
カズオ「昨日も今日も沖縄便がなんでこんなに混んでるんだよ!・・ちきしょう!こうな
ったらマジでキャンセル席を捜さなきゃ!」
ANN、LAL,格安航空会社のカウンターを次々と回り空き席を捜すが係員
は首を横に振り続ける。
サングラスの女(リコ)がコーヒー店のテーブルに座って、カズオを見つめて
いるカズオ、ロビーの搭乗入り口の前に座っている若者に声をかける。
カズオ「俺、どうしても次の便で帰らないといけないんだ。5倍の金払うからさ、搭乗券
売ってくれない?」
若者ギョッとしてカズオを見つめる。
若者「・・・あんたおかしいんでないの?冗談じゃないよ!」
憤然として立ち去る。
カズオ、肩をすくめすぐ時刻表を見上げているおばあさんに声をかける。
カズオ「ぶしつけですが、急いでいないようでしたら、手に握りしめてる搭乗券、わたし
に3倍の値段で売ってくれませんか?」
おばあさん「えっ?何ですって?」
カズオ「だから、ばあちゃんの切符を3倍の値段で買いましょうって言ったのですよ」
おばあさん「(ムッとして)ばあさんだと思ってバカにして!あたしゃそんな詐欺には、
掛からないよ!」
カズオ、逃げるように搭乗口に向かうおばあさんを見送り、お手上げという風
に手を挙げ、ソファベンチに座り込む。
落ち込むカズオの顔の前に、搭乗券が差し出される。
女の声「早くしないと一番機に乗り遅れるわよ」
カズオ「エッ?(と、顔を上げる)」
しげしげと女を見上げる。
カズオ「あんた、誰?」
女(リコ)、サングラスを少し下にずらして
リコ「時間がないわよ!」
カズオ、催眠にかかったように搭乗券をひったくり走り出す。
〇飛行機内
カズオ一番後ろの座席に座っている。
カズオ(MONO)「あの女は何者なんだ?それに俺は何で会ったこともない女のいう事を簡単
に聞いてしまったんだろう?」
〇那覇空港・朝
旅客機が着陸して来る。
〇機内
窓から外を見るカズオ。
カズオ「んっ?」
要所に配置されている自衛隊員の腕やジープの横腹に二重の赤丸の沖縄県旗が
ついているのが見えたような気がしてもう一度確認しようとすると、飛行機が
停止する。
ドアが開けられると同時に、マシンガンを手に武装警官Aが機内に入って来る。
客室乗務員、驚いて入り口をふさぐように固まってしまう。
警官A「失礼しますよ、お嬢さん」
警官A,客室乗務員を操縦席側へ優しく誘導する。
同時に警官Dが操縦席へ向かい、警官B,Cが入ってくる。
立ち上がって降りる準備をしている乗客の後ろから声が上がる。
乗客「何?事件?等々」
警官A「ご安心ください。我々は沖縄警察です」
と警察手帳を掲げる。
カズオ、立ち上がる。
警官A「皆さん!どうかお静かに!席にお座りください」
警官B、C、立っている乗客を座らせながら後部へ移動する。
警官A「沖縄はつい先ほど前に日本国から独立しました」
乗客から驚きと笑いの声が同時に起こる。
乗客A「嘘っ!」
乗客B「まーたまた冗談を!」
乗客C「エンタテインメントだな!これは受けるう!」
警官A「(困った顔で)突然なことで誠に恐縮なんですが、ぜひ協力を御願いします。
ついては皆さんパスポートはお持ちでしょうか?今日から、日本の方々はいわば外
国人となるわけでして、みなさん外国の方が沖縄に入国するには税関を通っていた
だかなければなりません」
乗客C「えっ!? パスポートなんて今持ってる訳ないでしょ」
警官A「パスポートを所持してない人は入国できません。残念ですがこのまま引き返して
もらいます」
乗客B「バカな!入国って一体何を言ってるんだ!ここは日本の沖縄じゃないか?」
乗客A「これはハイジャックだ!沖縄が乗っ取られたんだ!」
乗客D「みんなでハイジャック犯を取り押さえよう!」
数人の乗客が後部に居る警官?に殴りかかり押さえつけようとする。
カズオ「みんな冷静に、乱暴は止めさ!」
カズオ、警官を抑えつけている乗客を引き離そうとする。
乗客E「お前も仲間だな!」
カズオ「違う!違う!」
隊長が肩にかけていたマシンガンをぶっ放す。
思わずカズオと警官から離れる乗客。
呆然となる乗客たち。
乗客D「ホンマもんだ・・・」
警官A「御静聴ありがとう。今のは空砲なのでご心配なさらぬよう。しかし私以外の者た
ちは実弾を装填していますので、皆様方にはくれぐれも軽率な行動はとらぬよう警
告します」
体制を立て直した警官二人、腰から拳銃を抜いて安全装置を外す。
操縦席から機長が警官と一緒に出てくる。
機長「こんな乱暴なやり方しなくったって協力しますって。(乗客に向かって)どうか乗
客の皆さん、落ち着いてご協力お願いします」
カズオのスマホの着信音がなり、隠れるようにポケットからスマホを取り出す。
カズオ「・・課長! 沖縄が独立したって、何の冗談ですか?・・今どこって?飛行機の
中ですよ!」
課長off「昨日の便でかえって来なかったお前が悪い!」
カズオ「滅茶苦茶言わないでくださいよ。一体沖縄で何が起こってるんですか?」
課長off「見た通り、本日沖縄が独立したんだ。俺が向かいに行くからそこで待ってろ!」
カズオ「ここで待ってろ?冗談じゃない!」
警官A「では皆さん、パスポートをお持ちの方のみ税関まで移動してください。お持ちで
ない方は着席したままでお願いします」
数名の乗客がパスポートを掲げ立ち上がり出口に移動を始める。
カズオ、警官Bに沖縄県の名刺を見せて立ち上がり
カズオ「私は沖縄県の職員で、課長にいきなり呼び戻されて来てるんですよ!」
警官B「だめだ、そんなのは証明にならん!名刺などいくらでもコピー出来るし。おとな
しく座ってるんだ」
カズオ「ちょっと待ってよ!たった今沖縄県総務課長と携帯で話したばかりなんだって!
ほらこれだよ!これ」
と、スマホ画面の受信案内を見せる。
警官B「ん~、これも証拠としては弱いな。ダメダメとにかく一般人はパスポートがなけ
れば入国は出来ない規則だ」
カズオ「ったく、規則っていつ、誰が、決めた規則だよ!」
〇沖縄国防軍本部(首里城)・夜明け前
(テロップ)8時間前
腕に沖縄県旗のマークを付けた様々な人種の兵士が数十台のトラックに乗り込
みが石垣に作られた門から出てゆく
〇石垣の上
司令官と参謀、見送っている。
司令官「短時間でよくこれだけの連中を集められたもんだ」
参謀「世界中から沖縄の未来に命を懸ける若者が駆けつけてくれました。特に自衛隊を辞
めて来てくれる隊員は裏切りの汚名を覚悟の入隊です」
司令官「すばらしい!千名もの自衛隊員が味方になってくれるとは」
参謀「彼らは我が兵たちが各基地に到着次第自衛隊を離脱する予定です。もちろん武器弾
薬付きで。これで沖縄に残っている自衛隊員は六千名ほどになります。いずれ彼らも
説得してみせますよ」
満足げにうなずく司令官。
〇陸上自衛隊那覇駐屯地・入口(朝)
黒人の隊長が指揮する沖縄国防軍のトラックが、荷台を入り口に向けて並んで
いる。
隊長がトラックを下りて顔を青ざめて銃を構える警備兵Aに近づく。
警備兵B、室内に入り電話を取る。
黒人隊長「基地の司令官に逢いたい」
警備兵A「お、お前らは一体何者だ!ここを通すわけにはいかん!」
黒人隊長「任務に忠実で大変結構!」
腕を上げ、合図する。
トラックの幌が外され、機銃、戦車砲無反動砲が現れる。
ドアが開き、建物から武装した自衛隊員が現れる。
トラックから降りた兵士が銃を構え、狙いをつける。
自衛隊員をかき分けて前に出てくる司令官。
司令官「冗談では済まないような物々しさだが、あなた方はどちら様かな?」
黒人隊長「ここ沖縄は本日、日本国から独立して沖縄国となった。よってあなた方は外国
軍となる。友好国になるか敵国になるかはあなた方次第だ」
司令官、唖然となる。
隊員がお互いの顔を見あって声を漏らす。
隊員「独立?」「どうゆ事?」等々
司令官「ちょ、ちょっと待ってくれ!君たちは日本人には見えないんだが?もちろんアメ
リカ軍でもないんだろうね?」
黒人隊長「もちろん、我々は沖縄国防軍だ!」
その時、エンジン音が聞こえ、戦車が入り口に向かってくる。
司令官の前で止まると、戦車の後ろから数十名の隊員が整列し司令官に敬礼す
る。
隊員A「我々はこれより、隊を離脱いたします!これまでいろいろお世話になり、ありが
とうございました!」
自衛隊員たちがざわつきはじめ、離脱兵たちを取り囲み怒号が飛び交う。
自衛隊員たちの怒号「裏切り者!」「反逆だ!」「裏切り者は殺せ!」「恥を知れ!」
怒号を打ち消す様に、国防軍のジープから無反動砲が発射され炸裂、兵舎の壁
を破壊する。
隊員たちの騒ぎが一瞬で静まり返る。
唖然としたままの司令官。
屈強なメキシコ人兵、インド人兵、アフリカ人兵、ベトナム人兵、白人のアメ
リカ人兵などが離脱隊員を庇うように取り囲む
黒人隊長「自衛隊員諸君!我々は君たちと共に行動をすることを望んでいるが、抵抗する
ものは残念だが排除しなくてはならない!」
司令官「みんな!落ち着け!今圧倒的に我々に不利な状況にあることを考えて行動するん
だ」
黒人隊長「よろしい!では、戦車はあなた方と我々の友好の証として、謹んで頂いてゆき
ましょう」
隊員たちの怨嗟の声「戦車まで持ってゆくのか!」「日本人として恥ずかしくないのか」
「税金泥棒!」等々
離脱兵を先にトラックに乗せ、警戒しながら乗り込む国防軍兵。
トラックに続き、戦車が去ってゆく。
呆気に取られて見送る自衛隊員と司令官。
〇航空・海上自衛隊那覇基地
国防軍の兵隊が一機のジェット戦闘機に沖縄県旗を描き込んでいる。
県旗のマークを付けてジープが走り回っている。
〇同・司令部事務所
沖縄国防軍沖縄人隊長と自衛隊航空司令官が並んで外を眺めている。
ドアの前には銃を構えた国防軍の兵士2名。
司令官「あなた方は日本の財産を盗んだんだ。独立の為の崇高な行為などというが、泥棒
と変わりがないじゃないか。いやもっとひどい!お前らは強盗団だ!」
沖縄人隊長「ごもっともなご意見ではありますが、あなた方は今現在この沖縄国の土地を
不法占拠しているわけでして」
司令官「誰が糸を引いているのか分らんがこんな事がうまく行くわけがない。アメリカが
出てきたら、一発で潰されてしまうだろうよ。ま、せいぜいそれまで夢を見てるん
だな」
外を眺めたまま不敵に笑う隊長、部下の無線で報告する。
沖縄人隊長「自衛隊全基地の確保、完了しました!」
〇那覇空港・朝
海から日が昇り、建物や兵士の影が長く伸びている。
〇那覇空港・搭乗口ロビー
無人の航空会社のカウンター。
出入口や搭乗口を国防軍兵士が警備する中、まばらな乗客が緊張してソファに
座っている。
不安そうな面持ちで、やっと係員がカウンターに現れる。
〇空港内・通路
カズオと課長が折り返し飛び立ってゆく旅客機を見送っている。
カズオ「これって本当に本当の事なんですか?」
課長「お前、若いのに物事の把握力が遅すぎる!そんなんじゃこれからの急展開について
ゆけないぞ!」
〇県庁の地下駐車場(朝)
逆光を受けて車が入ってくる。
カズオと課長、車を降りてエレベーターへ向かう。
〇知事室
カズオと課長、入ってくる。
室内の雰囲気に驚くカズオ。
カズオ「これから何が始まるんですか?」
課長「まあ、見てろ」
大型TVモニターを机の前に設置して、小型ビデオカメラをセッティングして
いるカメラクルー。
照屋沖縄大統領が入ってくる。
課長「大統領!」
カズオ「エッ?県知事でしょ?」
課長「だから! 今日からは大統領なんだよ!」
カズオ「は~?」
戸惑うばかりのカズオ。
照屋、机に座りマイクを引き寄せる。
後ろの壁には沖縄県旗が掲げてある。
照屋「(課長に)よし、準備はいいか?」
課長「大丈夫です」
〇首相官邸・執務室
首相と防衛大臣がスィングの真似などしながらゴルフ談義で盛り上がっている
ところ防衛大臣の携帯の受信音が鳴る
防衛大臣「(のんびりと)なに言ってるのか聴き取れん。もう一度言ってくれ・・・沖縄
が占領された?(首相の顔を見つめ)ってお前、何言ってるんだ?・・・」
首相がせっかちに聞く
首相「沖縄?占領?って何の話だ?」
首相秘書官が慌てて入ってくる。
秘書官「総理!総理!大変です!」
秘書官、リモコンに飛びつき大型テレビをつける。
秘書官「これを!」
TV画面には文章を読み上げる照屋県知事が映っている。
照屋「沖縄は本日未明、日本から独立いたしました。我々沖縄国民は決して日本国民と敵
対するものではありません。沖縄国は世界に開放されています。すでにパスポートを
携帯した日本からのお客様も観光を楽しんでおられます。又、日本政府の方々につき
ましては、もう沖縄国のことはご心配なく、基地問題も我々の責任で全てかたずけま
すので、安心してオリンピックパラリンピックを楽しんでください」
青筋を立てて怒り狂う首相。
首相「何言ってるんだこいつは!独立なんて絶対認めんぞ」
スマホに向かって怒鳴りまくる防衛大臣。
防衛大臣「沖縄の自衛隊との連絡が取れない?それはどういう事だ?お前じゃ話にならん!
責任者を呼べ!責任者を!」
首相「(防衛大臣に)責任者は!お前だろうが!(呟いて)まぬけ奴」
ソフト帽を斜めに被り、しゃれた格好の財務大臣が入ってくる。
財務大臣「沖縄がとち狂ってるぜ!独立って、こりゃあ漫画の世界だぜ」
と笑い飛ばす。
〇琉球皇国塾事務所・昼
壁に特大の沖縄独立反対のポスターが貼ってある。
塾長と仲間の男たちがTV画面にくぎ付けになっている。
塾長「やられたあ!完全に裏をかかれた!」
男A「ちきしょう!半年前に仲間が次々と役所から追い出されたときに気付いていれば」
塾長「まだ間に合う!急いで仲間を集めるんだ!これから反撃だ!」
男Aのスマホの呼び出し音がなり、手に取る。
男A「はい・・・何だって?・・ああっ?(天を仰ぎ)もう手遅れだ!自衛隊が制圧されて
しまった」
と窓ガラスに両手を付き頭をこすりつける。
塾長「なんだと!?」
塾長、呆然とする。
〇那覇市警察署外観(昼)
警官たちが出てきて、パトカーに乗り込み四方に走る。
〇同・一室
日本から派遣されている警察官たちが集っている。
警官A「俺たちはどうなるんだ?」
警官B「今の日本でこんな横暴が許されていいのか?みんなこのまま黙ってるのか?」
警官C、ドアのノブを回すが鍵が掛かっていて開かない。
警官C「どうにか出来る状態じゃねえよ」
カチャリと音がして、別の入口から沖縄県警部長が入ってくる。
警察部長「いやあ、申し訳ない。すぐに日本へ戻ってもらう手配をしますので、もう少し
待ってくださいね」
後ろから声がする。
警官D「県警部長さんよ、こんなことが成功すると思っているんだったら甘ちゃんもいい
とこだぜ」
警察部長「いやいやご心配ありがとうございます。(にやりとして)ちなみに私の今の役
職名は沖縄国警察部長という事になりますので、以後よろしくお願いしますね」
前を向いたまま退出する警察部長。
警官D「なんだ?あの慇懃無礼な態度は!・・・全く頭にくるぜ!」
〇嘉手納基地・空軍司令官室
渋い顔で椅子に座っている空軍司令官。
司令官「ホワイトハウスの死刑執行人がやってくるぞ」
机の前に立っている照屋大統領。
ドアが激しく開かれる。
米大統領補佐官、入ってくるなり照屋大統領を怒鳴りつける。
補佐官「これほどの重要な事を我々に内緒で進めていたとは、お前らも相当の玉だな。実
際よくここまですっとぼけられたもんだ。しかしアメリカの協力なしでは何も進ま
ないぞ」
照屋「補佐官、まず初めにアメリカは我々の敵ではありません。沖縄が独立したからと言
って、貴国の軍事基地をすべて無くすなどという事はもうとう考えておりません。
むしろ2,3個の基地は残していただきたいのです。
だが北朝鮮の核が無くなり、友好国となった以上アメリカは沖縄に大規模な基地を置
いておく必要はないのではないのでしょうか」
補佐官「まだ中国の脅威が残っている。この脅威は未来永劫消えないだろう」
照屋「補佐官!我々の目下の脅威、いや!交渉相手はニッポンです。我々とアメリカとの
友好関係を保つためにも、ぜひ日本への影響力を行使していただきたいのです」
補佐官「とにかく我々を無視することは許さない。少しでも我々を軽視するような態度を
とったら、君たちの全ての目論見は消滅するだろうな」
照屋「どうかご安心を!補佐官。大統領に宜しくお伝えください」
〇名護海兵隊基地(深夜)
米軍輸送機のタラップの前で敬礼している兵士たち。
幹部士官と握手して輸送機に乗り込む補佐官。
機体から離れたところで見送る照屋大統領、カズオ、課長。
輸送機が離陸、夜空へ消えてゆく。
〇沖縄コンベンションセンター・入口
海底探査機器見本市の垂れ幕が掛かっている。
〇同・中・海底探査潜水艇の展示台
「潜水、深度1万メートル・自走式」の文字。
数か国の大使が熱心にのぞき込んでいる。
フランス大使「これじゃ沖縄はパクリ屋か?こんなのは我が国で何十年も前に作ってた探
査艇のパクリ以外の何物でもないぞ」
副大統領の浦崎が興味深々に見つめているロシア大使に近づく。
浦崎「副大統領の浦崎です。いかがですか?我が沖縄国が独自開発した最新の潜水艇の出
来栄えは?」
ロシア大使「まだ沖縄国って名乗るのは早いのじゃないかね?我が国はまだ独立を認めて
はいないぞ。沖縄を認めたら、今度は北方四島の独立運動が起こりかねない。
絶対認められん!」
韓国大使「でもあの島には、日本人がいないでしょ?」
ロシア大使「(皮肉っぽく)お前さんも、そんなのんきな事を言っていられる立場かね?」
後ろで聞き耳を立てている中国大使が、間に入ってくる。
中国大使「我々は沖縄独立を歓迎する。ぜひ沖縄海溝の海底資源を共同で開発しようじゃ
ないか」
と握手を求めてくる。
英大使が中国大使に近づく。
英大使「そんなに簡単に承認していいのかね?この騒動が香港に波及したら中国は大変に
なるんじゃないのかね」
冷笑。
中国大使「ふふん、まだイギリスは香港に関与出来ると思ってるのかね?」
浦崎副大統領がにこやかに展示台に上ってゆく
浦崎「皆さん!この潜水艇は型は古いですが、最新のテクノロジーが搭載されています」
コンパニオンに指を突き出し親指を立てる浦崎。
コンパニオンが軽くうなずきリモコンのスイッチを入れる。
潜水艇のモーター音が鳴り、先端から掘削ドリルが突き出し、シーサーロボッ
トへと変型して行く。
会場から驚きの声が上がる。
フランス大使「うおー!何だ、これは!?」
浦崎「如何です!魅力的なロボットでしょ!皆さん!これを自由に使って下さい。共同で
海溝を探査しましょう!」
カズオと課長、大使たちの集まりを眺めている。
照屋大統領が拍手をしながら大使たちの輪の中に入って行き、呼びかける。
照屋「独立承認と引き換えにアメリカ、ロシア、中国には沖縄領海の海底資源の採掘権を
与えることにしょう。もちろん日本にも参加を呼びかけるつもりだ。そうそうイギリ
スとフランスも忘れてはいけないな」
カズオ「そんなに分けられる程資源があるんですか?」
課長「それが外交交渉術というやつさ。ね、大統領!」
カズオ「それって詐欺じゃないですか!」
照屋大統領、冷静な顔で二人にウインクして大使たちの輪へ入ってゆく。
〇首相官邸(昼)
首相、閣僚たちに怒鳴りまくっている。
事務官たち、遠巻きに押し黙っている。
首相「いいか!絶対独立承認なんぞしないように各国に通達しろよ!」
外務大臣「G7のメンバーは大丈夫です」
首相「(秘書官に)おい!アメリカ大統領からの連絡はどうなってるんだ!」
秘書官「どうにも、アメリカ政府との連絡が取れない状態です。沖縄の自衛隊とも連絡不
能です!」
首相「お前らはど素人か!?この俺に情報を持って来るのは一体誰なんだ?」
秘書官「沖縄からの情報ならTVで見れますが」
首相「ふざけてるのかお前は、アメリカ大統領と早く連絡を取れっというのに!」
スポーツ大臣「オリンピック開催日が5日後に迫ってます!早く解決しないと」
首相「そんな事分かってるわ!(事務官たちへ)さっさと仕事へ戻らんか!」
事務官たち、ビクッと首をすくめそそくさと部屋を出てゆく。
〇元県庁舎・知事室
照屋大統領と浦崎副大統領、課長、カズオの順で入ってくる。
椅子に座る照屋大統領、机の横に立つ浦崎。
照屋「実は、明日の朝にアフリカと南米アジアからおよそ四十ヶ国の代表者が来訪する。
明後日の独立宣言式典に参列してもらう為だそればかりではないぞ。式典で沖縄独立
承認の署名をするのだ!明日は世界中のメディアも招待するぞ!
四十ッカ国もの国の独立承認が世界中に発信されれば、沖縄の独立は揺ぎ無いものと
なるだろう」
課長「それまで、彼らの安全を確保しなければなりません」
照屋「ああ、数日前からスパイやらなにやら大勢沖縄に入り込んでいる。情報は漏れてい
るかもしれん。どんな邪魔をされ不測の事態に陥るか分らないからな」
課長「すでに東京で秘密に訓練した護衛チームが到着しております(ドアに向かって叫ぶ)
いいぞ!入ってくれ!」
ドアが開き、リコと男が数名入ってくる。
驚くカズオ。
カズオ「課長!あの女、いつこっちへ?」
課長「なんだ?もうお知り合いか?」
リコ、課長の横を通り抜け大統領に挨拶する。
リコ「大統領、お初にお目にかかります。加山リコと申します」
照屋「よろしく頼むよ」
浦崎「副大統領の浦崎です」
リコ「よろしく」
課長「それと、この屋良カズオが加わります」
カズオ「えっ?俺?・・・」
課長、カズオの肩を叩き
課長「お前のこんどの仕事は外国の要人の警護だ!フィリピンで射撃の練習をしたり、プ
ロレスジムで格闘技の訓練をしたことを役立てる絶好の機会じゃないか!」
リコ「(微笑み)よろしくね、カズオさん」
カズオ「は、はあ~」
〇廊下
リコの部下が数歩前を歩き、遅れてリコとカズオが並んで歩いている。
カズオ「いつから俺のことを見張ってたんだ?」
リコ「課長から連絡が入ったでしょ。あの時あなたの事務所に行ったのよ。もうあなたは
出た後だったけど」
カズオ「なぜ空港で名乗らなかった」
リコ「(クスっとして)ごめんなさい、あなたの慌てようが可笑しくて。ちょっと芝居が
かってしまった」
カズオ「(怒り)おかげで俺は散々な目にあったんだ!」
リコを置いてズンズン歩き出すカズオ。
〇ホテル玄関前(夕方)
リコとカズオ、入ってゆく。
〇ホテル・ロビー
ロビーにたむろするロシア、中国、英国、仏国のスパイ、彼らを監視している
CIA。
カズオとリコ、入って来ると周りを見渡す。
カズオ「いかにもっていうような連中ばかりだな」
リコ「公明盛大にスパイ活動をやってるわね、あれがロシア、あっちが中国、あれがイギ
リス、こっちがフランス、あそこに隠れてるつもりで監視してるのが間抜けなCIA
よ」
カズオ「加山さんは、ずいぶんスパイに詳しいんだね?」
リコ「ちょろいもんよ。名字は堅ぐるしいから、リコでいいわよ」
カズオ「(不審な眼で見つめる)となると、お客さんをこのホテルに泊めるのはマズイな」
リコ「明日は、代表団の方々には沖縄観光旅行してもらいましょう」
〇沖縄沖(夜)
日本の潜水艦が浮上、黒ずくめの男たちがゴムボートに武器を降ろし乗り移る
疾走する2隻のゴムボート
〇海岸
ゴムボートが海岸に乗り上げる。
永倉、ゴムボートから降り当りを見渡す。
残りの男たちも、上陸しゴムボートを岩陰に隠す。
〇那覇空港・早朝
デッキから遠く離れたところに着陸する旅客機。
建物の陰から浦崎、カズオ、リコが乗るバスと警備員が乗るジープが数台、
旅客機に向かって走ってゆく。
旅客機のタラップから降りてくるアジア、アフリカの各国の代表者たち。
タラップの下で待ち構えるカズオたちとバスの周りを取り囲み守備に就く兵士
たち。
浦崎、代表者たちの手を取り握手してゆく。
浦崎「お疲れ様でした。この度は呼びかけにお応えいただきありがとうございます」
カズオ「ようこそ!沖縄国へ」
地上に降り立つ代表者たちを、バスまで案内して乗り込ませるカズオとリコ。
〇首相官邸(朝)
首相秘書官が小走りで入ってくる。
秘書官「沖縄の役人が各国に散らばって独立承認をするよう猛烈に働きかけています。す
でに数十か国の代表団が沖縄に入るという情報も」
首相「なにっ!?そいつらは沖縄に来て何をするつもりだ?」
秘書官「多分、独立を既成事実にしようとしてるのでしょう」
首相「既成事実だと!?あいつらは俺のお株を奪うつもりか」
秘書官「は?よく意味が・・・」
職員が入って来て秘書官に耳打ちする。
秘書官「総理!沖縄県は各国代表団の独立承認署名を独立式典の目玉にするつもりです」
首相「日本人は既成事実に弱いんだ!式典をブつぶして無かったことにするんだ!・・・
沖縄を孤立させろ。沖縄と取り引きする国がなくなれば、独立は潰れる」
秘書官「すでに内閣調査室が人選した秘密部隊が沖縄に潜入開始しました。式典は絶対潰
して見せます」
〇県庁舎・玄関前(昼)
新たに設置された柵の前に琉球皇国塾の文字の入った街宣車が数台並んで、大
音量のスピーカーで沖縄政府を罵倒し続けている。
スピーカーの声「卑劣な独裁者の照屋!お前は沖縄県民を騙して、裏切ったのだぞ!」
柵の内側で盾を持って対峙する警官隊。
独立反対派のデモ隊が、プラカードを掲げ、旗を振り押し寄せてくる。
ところどころで小銃を掲げている人が見受けられる。
〇那覇警察内
署長が大勢の署員の前に現れる。
署長「過激派は容赦なく独立賛成派を襲撃している。われわれ警察は沖縄防衛軍と連携し
過激化している独立反対派の検挙、鎮圧に励んでもらいたい」
隊長「出動!」
隊員たち「はい!」
〇沖縄警察車庫
完全武装した警官たちが、パトカーや装甲バスに乗りこみ発進してゆく。
〇大通り(昼)
各国の代表団を乗せたバスが走ってくる。
〇バスの中
カズオ、窓から街宣車とデモ隊で騒々しい大統領府を見ている。
街宣車の大音量の声がガンガン聞こえてくる。
リコ、マダガスカルの代表員の質問に答えている。
リコ「心配なさらないで、あれは日本の代表的なお祭りなんですの。非常に音が大きいの
で慣れてないと鼓膜が破れてしまいます。外国の方にはお勧め出来ませんわ」
マダガスカル代表「オー、日本の祭り!わたし近寄りたくありません」
カズオ「おい、あんまりいい加減な事言うなよ。あんた、沖縄を貶める為に来たのか?」
リコ「会話を楽しんでるだけですよ。ほんとにカズオさんて、冗談の通じない人ね」
カズオ「言ってろ!」
〇ホテル前
バスが到着する。
通りの向こう側で独立反対派と賛成派がぶつかり合ういざこざが、ビルの隙間
から見える。
リコの部下数人が下りてきて周りを警戒する。
〇バスの中
リコとカズオ、窓の外を見渡す。
カズオ、スマホをズボンから取り出す。
カズオ「ハイ!この周りもデモ隊同士がぶつかってて、ヤバイ状態です・・分りました!
すぐ移動します!」
リコ「(乗客へ)皆さんはホテルは見飽きてるでしょうから、今日は大自然の心休まる場
所へご案内いたします!(運転手へ)ドアを開けてちょうだい!」
ドアが開くと外に顔を出して叫ぶ。
リコ「みんな!急いで乗って!」
部下たちが乗り込んでくる。
カズオ「(運転手の肩を軽く叩く)発車だ!」
運転手、荒々しくギヤを入れアクセルを踏む。
〇ホテル前
バスが急発進する。
〇ビルの一角
重火器が並べられた部屋の中に5人の日本人が双眼鏡で降伏したグループを覗
いている。
部下A、無線を聞いている。
部下A「連絡が入りました」
永倉、ヘッドホンを受け取り片耳に当て聞く。
永倉「分りました。各国代表団の奪還に向かいます」
部下B「行き先は?」
永倉「まだわからん。(部下Aに)どうだ?GPSは大丈夫か?」
部下A「良好です!しっかり位置を確認出来てます!」
永倉「よし!(部下Cに)お前はワゴン車を裏に回せ」
部下C「ハイ!」
部下C、走って出てゆく。
〇県庁舎・玄関前
柵を間に挟んで警官隊に向かって琉球皇国塾の音頭に合わせてデモ隊が抗議の
声を上げる。
群衆「日本の沖縄を守れ!沖縄独立反対!」
デモ隊の後方で小銃を空に向かって打ち放つ男たち。
柵の内側の警官隊が緊張して銃を水平に構える。
デモ隊の最前列の人たちが、手で遮るような格好で後ずさりする。
指揮官「(警官たちに)待て!待てっ? 銃を下げろ!落ち着くんだ!」
警官たち、渋々銃を下げる。
それを見て勝ち誇ったかのようにこぶしを突上げ歓声を上げるデモ隊。
スピーカーでデモ隊に冷静になるよう呼びかける指揮官。
指揮官「みなさん!どうか冷静な行動をお願いします」
デモの後方のヤジ「県庁を占拠しよう!行け!行け!みんなで!攻め込むんだ!」
その声に呼号して最前列の人たちがこぶしを振り上げ叫びながら前進する。
柵が倒され、じりじり後退する警官隊。
デモ隊の数人が警官の一人に飛び掛かり殴りつける。
すぐ横の警官が小銃の台尻で男を打ち付け警官を助ける。
指揮官「早く中に入れ!」
警官隊、玄関の中に逃げ込み扉を閉める。
デモ隊、扉を乱暴に叩き喚く。
〇県庁舎・一室
照屋大統領と浦崎副大統領、心配そうに窓から外を見下ろしている。
照屋「ずいぶん過激になっているようだが」
浦崎「はあ~!」
警察幹部が入ってくる。
浦崎「警備は大丈夫なのか?」
幹部「今、応援部隊が到着しました!もうだ丈夫です」
〇県庁舎・玄関前
玄関の扉の前で気勢を上げるデモ隊に向かって突進してくるパトカーと装甲バ
スが、デモ隊を囲むようにすれすれに急ブレーキをかけ止まる。
悲鳴を上げるデモ隊。
マシンガンを手にした武装警官がパトカーと装甲バスから続々と降りてくる。
デモ隊の後方で銃を乱射していた男たちを取り囲みマシンガンを突きつけ拘束
する警官。
武装警官が琉球皇国塾の街宣車の運転手に催涙銃を突き付ける。
警官「早く車を出すんだ!ぐずぐずしてると催涙弾をぶち込むぞ!」
街宣車の運転手「分かった!分かったよ!お前ら、本土のポリ公より乱暴だな!」
隊長が装甲バスの屋根に上りデモ隊にスピーカーで警告する。
隊長「みんな!今日のデモはこのくらいにして家に帰ってくれ!これ以上騒ぎを大きくし
たら全員逮捕!勾留するぞ!」
デモ隊の声「われわれは市民の権利の行使をしてるだけだ!」
「横暴だ!権力の乱用だ!」
「そうだ!そうだ!」
隊長「お前たちの行動は表現の自由の域を超えているぞ。どう見ても武装集団としか見え
んがな」
外側の警官隊が囲みを解き、道を開ける。
デモ隊の外側から帰りだす人々。
隊長「いいぞ、みんな!おとなしく帰るんだ!」
散りじりに帰る人々。
〇那覇空港・屋上デッキ
民放のアナウンサーが那覇空港の外を見ながら中継している。
アナウンサー「空港の中は穏やかですが、市街地ではあちこちで煙が上がっています!」
銃声がして思わず床に伏せるアナウンサー。
アナウンサー「そろそろと頭を上げて)どうやら打ち合いが始まった模様です!あっ!向こう
で車が炎上しています。あっ!警官隊が誰かに向かって射撃をはじめました。
ここは本当に日本なのでしょうか?これは現実でしょうか?それとも私の幻
想なのでしょうか?沖今縄が戦場になっています!」
〇市街地
銃を撃ちながら駐車している車に隠れながら逃げる5~6人の武装独立反対派。
警官隊がビルの陰から応射しながら追う。
武装独立反対派がワゴンに乗り込み発進させる。
脇からパトカーがワゴンに体当たりして止める。
警官隊がワゴンを取り囲みガラスを銃撃して中へ催涙弾を投げ込む。
警官「もう逃げられないぞ!銃を窓の外に投げて、出て来い!」
しばらくすると、銃が窓から投げ捨てられる。
警官「さっさと出てくるんだ!」
ワゴンのドアが開いて武装グループがゴホゴホ咳をしながら出てくる。
警官「両手を高く上げるんだ!」
両手を上げる武装グループに銃を突きつける警官。
〇官邸
暴動のTV中継を見て、興奮する首相。
首相「奴ら頑張ってるじゃないか!沖縄のテロリストに反撃している同志へもっと応援を
送れ!」
秘書官「総理!不穏当な言葉は謹んで頂いた方がよろしいかと。総理の立場としましては
何とか穏便にことを収めていただくようお願いいたします」
首相「そんなことはお前に言われんでも百も承知だ!すぐ閣僚会議を開く。全員招集しろ!」
秘書官「はい!」
急ぎ足で出てゆく秘書官を見送る首相。
〇日本オリンピック委員会事務局
事務局スタッフたちが、問い合わせや苦情の電話やメールの対応に追われている
スタッフA「いえいえ、大丈夫間違いなく開催します!・・いや、確約と言われましても、と
にかくやれますから!」
スタッフB「この騒動は遠く沖縄での出来事ですし、それに騒動の理由はオリンピックとは関
係ないので」
オリンピック事務局長が、慌ただしく入ってくる
受話器をもったまま誰かを探しているスタッフC、局長に受話器を振り回して叫ぶ
スタッフC「局長!局長!緊急連絡です!」
局長、飛ぶように走ってきて受話器をひったくる
局長「もしもし!局長です!・・・え?!沖縄 オリンピック協会?・・・代表選手団を派遣
する?ふざけるな! てめえらのおかげでオリンピックが潰れそうになってんだよ!」
受話器をたたきつける
〇那覇空港
続々と旅客機が着陸している。
〇同・税関
マスコミ関係者がパスポートを提示して通過してゆく。
記者A「案外簡単に通過出来たじゃないの」
記者B「シリア並みの紛争地域になってるのかと思ったのに、拍子抜けだな」
〇屋上デッキ
野次馬的に眺めていた観光客が近距離から打ち込まれた銃声に大げさに驚くが
一斉に銃声の聞こえる方角にスマホを向ける。
客A「きゃ~、すごい!すごい!本物の戦争みたい!」
客B「うおー!今人が倒れたぞ!おっそろしい!」
客C「おい!おい!いいのかよ!死んじゃったんじゃないのか」
〇到着口ロビー
税関を通過してきた記者たちが案内カウンターのレンタカーやヘリコプターの
レンタル会社へ殺到している。
記者A「車を3台借りたいんだ!」
記者B「ヘリを大至急用意してくれ!」
〇郊外の道
前後を警護車に挟まれたバスが木々の間を走っている。
〇先頭の警護車の中
助手席に座っているカズオ、落ち着きなく前方あるいは左右を見つめる。
〇バスの中
リコ、四十ヶ国の代表の乗客の間を回り、にこやかにおしぼりやジュースを配
っている。
ウガンダ代表「お嬢さんのおもてなし最高ね!」
カメルーン代表「ジュースより私、お酒ほしいところだがね」
リコ「独立署名式典が終わりましたら、お好きなだけ召し上がって頂きますわ」
ブラジル代表「どうも不穏な空気の匂いがしてショウガないんだが」
リコ「心配には及びませんわ。バスの前後を警護車でまもっていますし、皆様方の身の安
全には万全を尽くしておりますので、式典まで、どうぞ沖縄の観光をお楽しみ下さい
ませ」
〇バス・床下の荷物入れ
隅のバッグの中のGPSが作動している。
〇走る商用ワゴン車の中
荷物室は武器が所狭しと積んである。
部下A、荷物室で荷物胡坐をかいてパソコンを操作している。
部下A「よし、見つけたぞ!」
助手席の永倉、後ろを振り向き
永倉「どこだ」
部下A「20キロ先、沖縄市に向かってます」
永倉「沖縄市?よし(運転している部下Cへ)急ぐんだ!」
〇道
猛スピードで走る商用ワゴン車。
〇沖縄市郊外の道路
十字路に近づくバスと2台の警護車。
道路案内板の右方向が沖縄市。
〇警護車の中
カズオ「このまままっすぐ行け!」
警護隊員A「いいんですか?まっすぐ行ったら」
案内板をまっすぐ通りすぎ、焦ったリコの声が無線で入ってくる。
リコoff「屋良さん!道、間違えてるわよ!」
カズオ、マイクを握って
カズオ「いいんだ!このまままっすぐ行け」
〇バスの中
リコ、怒っている。
リコ「まっすぐ行ったら米軍基地よ!一体何考えてるの!」
〇警護車の中
カズオ「大丈夫だ!俺に任せてくれ!」
と無線マイクを置く。
〇商用ワゴンの中
スマホを確認している部下A、首をかしげる。
部下A「キャップ!獲物が沖縄市を超えて森へ向かっています」
永倉「かえって好都合だ!一気に肩をつけてやる」
〇森の中の道
2台の警護車とバスが細い道を縫って走っている。
〇商用ワゴン車内
走る前方に森が見えてくる。
部下C「この先は米軍基地ですよ」
永倉「奴ら何を考えてるんだ?米軍に捕まったら式典開催も出来なくなるだろうに」
部下D「我々の任務は終了ですか?」
永倉「いいや!奴らは俺たちの獲物だ!誰にも渡さん」
〇道
米軍基地(キャンプハンセン)が見え始めたところへ差し掛かった先頭の警護
車が急停止する
〇バスの中
運転手、慌てて急ブレーキをかける。
リコ、前につんのめり座席に叩きつけられる。
リコ「痛!」
運転手「すみません!前の車が!」
リコ、よろよろ立ち上がり怒鳴る
リコ「今度は一体何なのよ!(運転手に)開けて!」
ドアが開き、リコが怒りの形相で出て行こうとするとカズオが入ってくる。
カズオ「(客席に)さあ!皆さん!この先に見えるのが米軍基地です。あそこが日本を守
っていると言われている場所です」
乗客一同「オー!米軍は敵じゃなかったのかね?」
リコ「ここで米軍と一線交える気?キチガイ沙汰よ」
カズオ「基地の司令官とは話をつけたから、大丈夫だ!」
リコ「あんたバカじゃないの?それこそ相手の思うツボでしょ」
カズオ「そうかな」
リコ「あんたって、救いようのないバカ?」
〇道
商用ワゴン車、道の端に寄せて止まる。
〇商用ワゴン車内
荷台の男たち3人が、銃を手にする。
永倉「銃は隠せ。道に迷った観光客のふりをするんだ」
男たち「はい」
銃を背中に隠す。
永倉「いいか、決して日本語はしゃべるんじゃないぞ。中国語か韓国語にしろ」
男3「英語はだめですか?」
永倉「あほか!お前らどう見たって白人には見えないだろが! 行け!」
男4「イエッサー」
そろそろと車が発進する。
〇バスの外
後ろの警護車から降りて来てバスのドアの前に来る隊員BとC。
隊員C「どうかしたんですか?」
カズオ、バスから降りる。
カズオ「いや、何でもない。これから米軍基地に入る」
隊員C「ちょっと待ってください。わざわざ敵に捕まりに行こうって言うんですか?」
カズオ「聞くけど、いつからアメリカが我々の敵になったんだ?」
隊員C「日本と軍事同盟を結んでますし」
カズオ「我々も同盟を結べば良いだけの話さ」
隊員B、後方を見やり
隊員B「隊長!」
カズオ「ん?(後方を見る)」
カズオ、隊員B、C、バスの後方へ歩いて行く
〇商用ワゴン車内
永倉「止めろ」
バスの後方の警護車の横に並んで車が止まる。
前を見つめる永倉。
バスの前の方からカズオ、隊員B、C、が歩いて来るのが見える。
〇道
バスの後ろに並んで止まっている警護車と商用ワゴン。
ワゴンの前に来て運転席を見上げるカズオ。
ワゴンの後ろのドアが開けられ、永倉と部下A、Bが降りてくる。
部下B「(中国語、ジェスチャー無しで)観光旅行で来たのですが、 道に迷ってしまい
ました」
警護隊員BとC、困って顔を見合わせる。
隊員B「中国語だと思うが、何を言ってるのか俺にはさっぱり」
と、カズオを見る。
カズオ「オッ!そうだ!バスの中に話せる人がいるかもしれん」
カズオがバスに行こうと背を向けた瞬間、男たちが背中に隠し持っていたマシ
ンガンを構え、車から部下、C,Dが銃を構え降りてきて永倉と並ぶ。
永倉「よーし、みんな、ホールドアップだ」
隊員C「今度は英語?いや、意味は分かるから」
隊員B「はい、はい」
警護隊員B,Cが、両手を高々と上げる。
カズオ、振り向く。
永倉「あんたもだ」
いぶかし気に両手を上げるカズオ。
カズオ「あんたら、日本人だよな?」
永倉「バスの警護はたった3人か?」
カズオ「ああ、」
永倉「(部下C、Dに)前の警護車とバスの中を調べるんだ!」
部下C、D「はい!」
永倉「(部下Aに)こいつらの銃を取れ!」
部下Aがカズオ、隊員B、Cの腰から銃を引き抜く。
バスの中から外を見下ろしている乗客が何かわめいている。
部下C、D、慌てて走って閉じられようとしているバスのドアにマ
シンガンをぶっ放す。
〇バス車内
マシンガンで壊されたドアから、部下C、Dが入ってくる。
パニックを起こしている代表団たち。
マシンガンで狙いを付ける様に、社内を見渡す部下C。
部下C「お静かに!我々は決して皆さんに危害を加えるようなことはありません」
リコ、一番後方で立ち尽くしている。
部下D「車を見てくる」
バスの外に出て行く部下D。
〇先頭の警護車
部下Dが近づいて来る。
警護隊員A、地面を転がり脇の草むらに隠れる。
部下D、車内を見渡し後方に向かって叫ぶ。
部下D「隊長!大丈夫です!」
〇道
永倉「縛り上げろ」
部下A、Bが、カズオ、警護隊員B、Cを縛り上げ猿ぐつわをする。
永倉「ワゴン車の中に放り込んでおけ!」
部下A「さあ、行くんだ!」
カズオ、警護隊員B、C、ワゴン車に押し込められる。
部下A、B、戻ってくる。
永倉「(部下A、Dに)お前らはバスを見張れ!(部下B、Cに)お前らは俺と一緒だ」
〇先頭の警護車
永倉と部下B、Cが警護車に走って来る。
警護隊員A、頭をひっこめる。
部下B、運転席に乗り込む。
永倉、部下C、反対側から助手席に乗り込む。
〇道
急発進する警護車とバス、基地入り口を急カーブして走って行く。
警護隊員A、草むらから見送り、商用ワゴンの方を振り向く。
〇米軍基地・入り口検問所
憲兵、室内で電話を掛けている。
憲兵「司令官!例のバスは基地の前でUターンして帰ってしまいました!」
〇米軍基地・司令官室
司令官、受話器を降ろし、机の前に立っている中尉を非難するように。
司令官「どうやら抱き込み作戦は失敗したようだな。中尉」
中尉「誰かがが余計な事をしてくれたようで」
司令官「追跡は抜かりないだろうな」
中尉「はい!空からヘリで、追跡中であります」
〇ワゴン車内
警護隊員A、ナイフでカズオの手首の縄を切っている。
カズオ、手首に力を入れ力んでいる。
カズオ「む~!」
隊員A「そんなに動かしたら、手首のほうが切れちゃいますよ!」
やっとカズオの縄が切れる。
カズオ「はあ~、ありがとう」
カズオ、自分のさるぐつわを剥がし、警護隊員Bの縄を切る。
隊員A、警護隊員Cに寄って行き、縄を切る。
カズオ「まんまとやられたな。リコはどうした?」
隊員A「バスの中です。一緒に連れ去らわれたものと思われます」
カズオ「奴ら、代表団をどこへ連れてゆこうとしてるのか」
警護隊員A、運転席に這って行き、ダッシュボードを調べる。
ダッシュボードに残されたスマホが光っている。
隊員A「屋良さん!見てください!」
カズオ、後ろからのぞき込む。
カズオ「ん?何だそれは?」
隊員B「GPSの受信機ですよ」
カズオ「GPS?」
隊員C「対象物の位置確認出来るものですよ」
カズオ「それは分かってるが・・・・」
隊員A「(何かに気づき)屋良さん、奴らこれで追跡して来たんですよ!」
隊員B「誰かがバスに発信器を取り付けたんだ」
カズオ「!そのスマホを持って来い!追いかけるぞ!」
外に飛び出したカズオに続いて、隊員たちも飛び出してゆく。
〇カズオの警護車の外
運転席に乗り込む警護隊員A。
助手席に乗り込むカズオ。
後ろの席に乗り込む警護隊員B、C。
〇カズオの警護車の中
隊員A、キーの差し込み口を探る。
カズオ「どうした?!」
隊員A「キーが無い!直結でかけます」
ハンドルの下にもぐる隊員A。
〇住宅地の離れ道
永倉たちの乗る警護車とバスが走っている。
〇永倉の警護車の中
運転している部下B、空を見上げ
部下B「さっきから米軍ヘリがしつこく付きまとってやがる」
永倉、窓を開けて腕を外に出し、中指を突き出す
〇バスの中
マシンガンを持った永倉の部下A、Dが座席の間の通路を行ったり来たりして、
代表団を威嚇している。
リコ、一番後ろの座席で腕をクンで座っている。
〇米軍ヘリの中
白人のパイロットと射撃手が地上を走るバスの追跡を楽しんでいる。
射撃手「ただ追跡してるだけじゃ退屈しちまうちょっと驚かしてやろうぜ」
パイロット「止めとけって、誰か傷つけてでもみろ、軍法会議もんだぞ」
射撃手「大丈夫だって、奴ら、日本人と各国の代表団らしいがどうせ黄色と赤と黒の連中だ。
どうってことないさ」
パイロット「どうなっても知らんぞ」
といいながらも高度を落としてゆく。
〇バスの中
代表団のひとりが,窓の外を指さす。
ブラジル代表「アメリカ軍のヘリだ!」
ウガンダ代表「我々を助けに来たのか?」
リコ、窓に駆け寄る。
リコ「違うわ!」
ヘリが大きく旋回している。
永倉の部下A、壊れたドアから空を見上げ銃を構える。
部下A「まさか、俺たちを狙ってるのか?」
〇ヘリの中
射撃手「へへへ、行くぜ!」
機銃のボタンを押す。
銃口が火花を放つ。
〇永倉の警護者の中
警護車の前方で銃弾の土煙が上がり、一瞬視界が遮られる。
部下B「うわあ!ほんとに撃ってきた!」
慌ててハンドルを左右に切り回すと、永倉、後ろにのけぞる。
永倉「くそっ!やってくれたな!」
激しく蛇行し、景色が大きく揺れる。
〇ヘリの中
射撃手、にやにやして足をバタバタ床を踏んで、奇声を上げる。
射撃手「ほー、ほー!」
パイロット「これで満足だろ、任務に戻るぞ」
レバーを引くパイロット。
空と雲が大きく傾き動く。
〇バスの中
車体が左右に揺れ、必死に手すりに?まる永倉の部下たち。
リコ、怒りで窓の外をにらみつける。
リコ「あいつら!・・・住民に当たっていたらどう責任を取るつもりなの!」
ウガンダ代表「(汗を拭きながら)何がどうなっているのやら」
〇永倉の警護車の中
永倉、後ろのヘリをにらみつける。
永倉「奴ら!脅して遊んでやがる」
〇道・夕方
カズオたちが乗る警護車が、林を抜けキビ畑の横を猛スピードで走っている。
〇カズオの警護車の中
後ろの席の隊員Cが窓から顔を出しヘリを見る。
スマホを覗いている隊員B。
カズオ「(後ろを振り向き)バスの姿が見えないぞ!奴らはどこにいる?」
隊員C、顔を車内に戻す。
隊員B「今!1キロ先を森の中に入りました」
隊員C「屋良さん!米軍ヘリがバスを追跡してますよ!」
カズオ「くそ!急げ!」
と運転席の隊員Aの肩を叩く
〇森の中の道
永倉の警護車とバスがフェンスの脇を跳ねながら走っている。
〇森の入り口
カズオの警護車がライトを点け、森の中に入ってゆく。
〇森の奥の道
木がうっそうと繁り、ライトを点けて走るSUVとバスの窓をビシバシと叩く。
〇SUVの中(夜)
永倉、不安そうに眼を凝らしてキョロキョロしている。
永倉「オイお前!どこを走ってるのか分かってるんだろうな」
部下B「真っ暗で何も見えません・・・いつの間にかフェンスがさっきまでは右側だった
のが今や左になってます!」
永倉「何言ってんだよ!お前!迷路に入り込んでしまったとでも言うんじゃないだろうな」
部下B「それが、・・・どうもそうみたいでして」
永倉「くそっ!どういうことだ!」
〇バスの中
バスは木の枝にぶつかりながらゆっくり進んでいる。
ざわつく車内。
リコ、窓の外を見て不安になる
リコM「一体どこに行くつもりなの?」
男たち3人は平静を装いつつ窓の外をキョロキョロ眺めている。
〇米軍ヘリの中
パイロット「バスを見失った。ずーっとフェンスの外を走っていたのにいつの間にか消え
ちまった」
射撃手「ここは俺たちの基地だぞ!突然消える事なんてあるもんか。もっとよく捜せよ」
〇森の中
カズオたちが乗る警護車がフェンスの右側を走っている。
〇カズオの警護車内
スマホを見ている隊員Bが焦っている。
隊員B「屋良さん!バスがどんどん遠ざかってるんですが」
カズオ「追跡を感ずかれたか?」
隊員B「それが、バスの速度は遅くなってるんですが、右側に斜めに離れていってます」
カズオ「どういう事だ?」
隊員A「奴ら、米軍基地の中に入り込んでいってるんじゃないですか」
カズオ「なんだって!?」
隊員A「右側のフェンスの向こう側は米軍基地です。右の方に走ってるって事はそれしか
考えられない」
カズオ「しかし、どこから入ったんだ」
〇森の中・夜
カズオの警護車が走る道の前方に、大木が道を塞いでいる。
〇カズオの警護車内
隊員A「何でこんなところに木が生えてるんだ?」
カズオ「横を突っ切るんだ」
〇森の中・夜
カズオの警護車が大木の左横をすり抜ける。
小枝にぶつかりながらゆっくり走る警護車。
右側の蔦に絡まれたフェンスが途切れている。
〇森の奥(バスの通った場所)
ますます増える小枝に邪魔にされながらも進むカズオの警護車
いつに間にか、左側にフェンスが伸びている。
〇カズオの警護車内
隊員B「(スマホを見て)バスとの距離が近づいています」
隊員A「屋良さん、フェンスが・・・左側に現れて来ました」
隊員C「という事は我々も米軍基地の中に入り込んでしまったという事か?」
カズオ「まさか?そんな事が・・・・?」
〇森の上のヘリ
射撃手「オイ!今何か光ったぞ!もっと高度を落としてくれ」
パイロット「OK!]
高度を落として森の木スレスレを飛ぶヘリ。
パイロットoff「司令部!こちら偵察ヘリ!車両を発見!基地の中を走行中!」
〇森の奥の奥・夜
木々が立ちふさがり前に進む隙間がなくなってしまい立往生する永倉の警護車
とバス。
〇森の中
永倉と部下Bが車からを降りてくる。
永倉、渋い顔で木々を見上げる。
永倉「これまでか?」
部下B「ここで明日一日やり過ごしますか?」
永倉「そうだな、これで明日の独立署名式典は台無しだ」
部下B「第一目標は達成しましたね」
リコ、部下Aを振り切ってやってくる。
リコ「うるさいわね!こんなところで逃げるわけないでしょ」
永倉「おやおや、威勢がいいのも大概にした方がいいんじゃねえか」
リコ「まさか一晩中ここに居るんじゃないでしょうね、アメリカ軍に見つかったら大変よ」
部下A、不審げにリコと永倉の顔を見比べる
永倉「どうかな」
ぞろぞろ代表団がバスから降りてくる
カメルーン代表「うーん、いい匂いと滝の音が聞こえる・・・きっとここは神聖な場所に
違いない」
リコ「滝?」
リコ、誘われる様に歩いて行く<br>
部下A「オイ!どこへ行く!勝手な真似は許さんぞ」
追いかける部下A
〇森の中の滝の前
外界から隠すように木々の葉に覆われた水が滝壺に流れが落ちている。
滝を眺めている永倉たちと代表団。
リコ、滝の裏側から出て来て叫ぶ。
リコ「滝の奥が洞窟になってるわ!」
永倉「ひとまず洞窟で休むとするか。米軍もここまでは捜せまい」
一同、移動を始める。
〇森の奥
カズオの警護車がいばらの奥から小枝を折りながらやってくる。
〇カズオの警護車内
隊員A「屋良さん!あれ!」
カズオ「(前を凝視して)車を止めろ!」
警護車、停止する。
バスがライトに照らされて現れる。
隊員Bも前方をのぞき込む。
隊員B「人の気配がない」
カズオ「よし、行くぞ。まずバスを確保するんだ」
カズオと3人の警護隊員が拳銃の弾倉を確認して、腰のホルスターに差し、車
から出てゆく。
〇バスの後ろ
カズオと隊員Bがバスの後ろの両側から前方の様子を伺う。
カズオ「ん?(隊員A、Cへ)やはり誰もいない」
隊員B「(カズオのそばに来て)どうしたんでしょうか?誰も見当たりません」
カズオ「突っ込むぞ!(隊員B,Cへ)君たちはそっちから行ってくれ。(隊員Aへ)行
くぞ!」
カズオと隊員Aがバスの前方へ走る。
隊員Aが床下の荷物入れのドアが開いていることに気づき中を覗く。
カズオは、バスの中に入って行く。
〇バスの中
カズオ、ガランとしているバスの中に入る。
カズオ「これは!・・・何処に行ったんだ?」
隊員A、GPS発信機を手にして入って来る
隊員A「荷物室で発信器を発見しました」
カズオ「ん!」
外を見ると隊員B、Cが警護車の運転席を覗いている。
バスに向かって両手を広げ、誰もいないことを知らせる隊員B。
カズオ「どこに消えた」
隊員Bが入ってくる。
隊員B「この先は大木が密集していて車は進めません」
カズオ「あの人数だ、そんなに遠くへは行ってないはずだ。形跡を捜そう」
カズオ、バスを出てゆく。
後を追う隊員A、B、C。
〇森の中の滝の前
カズオたち4人がバスの行方を阻んでいる木々の間から出て来る。
滝のしぶきが星明かりに照らされ輝いている。
隊員A「なんと!」
隊員C「おお!美しい!ここが基地の中とは、案外、米軍がこの景色を守ってくれたか?」
カズオ「バカ言うな!こんな素晴らしいところをアメリカ軍は訓練と称して弾丸や爆弾で
破壊してるんだぞ」
〇滝の裏の洞窟
永倉が懐中電灯の明かりを頼りに歩いている。
その後ろから、リコと40人の代表団が前後左右をマシンガンで武装した男た
ちに囲まれ歩いている。
リコに不平をぶつける数名の代表団。
ブラジル代表「われわれに対するこの仕打ちはどうあっても認めることは出来ないぞ」
ウガンダ代表「君たちは我々の安全は任せておけと言ったはずではないか!」
リコ「大丈夫です。あなた方の安全は保障します」
ブラジル代表「保障というが現に我々はとらわれの身ではないか!」
リコ「私に任せてください。もうすぐあなた方は安全に解放されますから」
カメルーン代表「感じるぞ!神の息吹を感じる」
部下D「ごちゃごちゃしゃべるんじゃない!」
部下D、マシンガンをリコの顔に向ける。
リコ「銃を私に向けるんじゃないわよ!」
リコ、銃口を握って上に向ける
部下D「何しやがるんだ!このアマ!」
反動で射撃してしまう部下D。
カメルーン代表「ああ!止めてくれ!神の怒りにふれる」
〇滝の前
滝の後ろから聞こえてくる銃撃音。
カズオと隊員たちが顔を見合わす。
カズオ「あれは?」
隊員A「間違いない!」
隊員B「マシンガンだ!」
隊員C「どこだ?」
カズオ「(指差し)滝の後ろから聞こえてきたぞ」
隊員A「いきましょう!」
一同、洞窟へ向かって走り出す。
〇洞窟の中
永倉「何やってるんだ!この馬鹿が!」
部下Dの銃を奪い取り頭を小突く
部下D「すみません、この女が」
永倉、天井から落ちてきた土ぼこりを払う。
永倉「やばいな」
と、天井を見上げる。
足元の地面にひびが入って来て、みるみる間に砂が吸い込まれて行き穴が広が
ってゆく。
永倉「下がれ!下がるんだ!」
部下D、蟻地獄化した地面に足を取られ倒れ飲み込まれてゆく。
部下D「た、助けてくれ!」
代表団たちも次々と砂に足を取られ、次々と砂底に消えてゆく。
壁に張り付く永倉、リコもついに砂に足を取られ滑り落ちてゆく。
〇地中のトンネルの中
砂と一緒に流されてゆく永倉、男たち、リコ、代表団。
〇古代遺跡の広間
石造りの像が並ぶ大きな部屋。
壁に穴が開き、砂まみれで地面に吐き出される永倉、その部下、リコ、代表団
砂の山から這い出て砂を払う一同。
永倉「どえらいところに来たようだな」
リコ、頭を掻きむしって髪の毛の砂を落とす。
リコ「ここは一体?・・・(像を見て)こんなところに古代遺跡?この像は女神像?これ
は何かしら?」
像に触れて回るリコ。
不安に駆られている代表団。
奥のほうから灯りが漏れている。
永倉「あれは何だ?」
部下Bの背中を押す。
部下B「見てきます」
部下B、奥の方へ走って角を曲がって行き姿が見えなくなる。
永倉「どうした?大丈夫か?」
口に手を当てよろよろと後ずさりしてくる部下B。
震える手で奥のほうを指さす。
永倉「!」
永倉、部下Bと奥を見比べ走ってゆく。
部下A、C、Dが追いかける。
〇黄金の間
驚愕する永倉。
永倉の見つめる先に、黄金の詰まった箱が所狭しと置かれている。
永倉「こ、これは一体!」
部下A、C、D、叫ぶ。
「黄金だあ!」
その声に釣られるようにリコと代表団も一斉に走り出す。
〇洞窟の中
滝を背にして手探りで歩くカズオたち。
カズオの懐中電灯が穴を照らす。
カズオ「この先に、大きな穴が開いているぞ」
隊員A、B,Cが横に並んでのぞき込む。
カズオ「連中はどこだ?」
懐中電灯で底のほうを照らすと砂が蟻地獄状態になっている。
カズオ「蟻地獄だ。全員穴に落ちてしまったのか?」
しゃがみ込むカズオ。
隊員B「屋良さん?」
カズオ、ゆっくり立ち上がり
カズオ「残念だ・・・知事に報告しなければ」
その時、カズオたちが立っている地面が崩れ、穴に吸い込まれるカズオと3名の隊員。
隊員「うわあ!」
〇穴の中
螺旋状の穴を滑り台を滑ってゆくように落ちてゆくカズオと3名の隊員。
〇古代遺跡の広間
壁の穴から落下してきて砂地に潜るカズオと3名の隊員。
砂の中から這い出て、周りの様子を探る一同。
隊員C「ここは一体?」
カズオ「奥のほうから人の声がするぞ」
〇黄金の間
永倉と男たちは拉致実行犯の立場を忘れ、代表団たちも被害者の立場を忘れて
黄金の入った箱の間を、驚きと欲望の表情で動き回っている。
ブラジル代表「沖縄とはなんと神秘な国なんだ」
リコ「・・・ニライカナイ?」
カメルーン代表「神の恵みだ!」
ウガンダ代表「あんたの神様は怒ってるんじゃなかったんじゃないか」
永倉、両手に山盛りの黄金を掲げ叫ぶ。
部下A「俺たちが発見したんだ!この黄金は俺たちの物だ」
興奮に我を忘れ、はしゃいでいる一同。
〇古代遺跡の広間
カズオと隊員が像の陰に隠れて見つめる。
カズオ「奴ら!黄金に目がくらんで無防備状態だ」
隊員B「ひっ捕らえましょう!」
カズオ「よし、行くぞ!」
一同、興奮している代表団の人混みへ走る。
〇黄金の間
代表団の中をぬって永倉たちに近づくカズオと警護隊員。
隊員A、首飾りを互いの首に掛け合ってはしゃいでいる永倉の部下C、Dの後
ろへ近づく。
カズオ、永倉の後ろから飛び掛かろうとすると。
リコ「キャップ!後ろ!」
カズオ「リコ?!」
振り向く永倉。
カズオ「クソッ!」
永倉、タイミングの遅れたカズオのパンチをかわすと、カズオ抱き付きそのま
ま黄金箱の中に倒れ込む。
永倉の部下C、Dが異常に気付くが、隊員Aに銃尻で殴られ倒れる。
隊員A,倒れている二人を並べ手に手錠を掛ける。
意識を取り戻してもがく部下C,D。
部下C「どうして、この場所が分かったんだ」
隊員A「お前らのGPSを逆用したって訳さ」
部下C「(悔しがる)あっ!」
隊員BとCが、金貨を手にして見とれている永倉の部下A、Bを床に倒し、頭
に銃を押しつける。
隊員B「動くんじゃないぞ」
箱の中から床に飛び出て、殴り合うカズオと永倉。
投げ出されたマシンガンを探すリコ。
宝石箱に倒れ込ノックダウンした永倉に手錠を掛けようとするカズオの後頭部
にマシンガンを押し付けるリコ。
リコ「そこまでよ!」
カズオ「(振り向き)リコ?・・・いつからだ?」
リコ「よくよく鈍い人ね」
永倉「(起き上がって)銃をもらおうか」
カズオの腰から銃を引き抜きカズオに銃を向ける。
リコ「(隊員たちへ)あなた達も銃を捨てて仲間を離しなさい!(代表団へ銃口を向け)
代表団に犠牲者が出てもいいの!」
隊員A「裏切者め!・・・・GPSを置いたのも あんたか」
リコ「あら?裏切りなんかじゃないわよ。もともと日本の為に働いていただけだから」
隊員A「まあ、ものも言いようだな。ほらよ」
銃を床に捨て、部下C、Dの手錠を外す。
部下D「形勢逆転だな」
永倉「(代表団に)全員座るんだ!リコ、こいつらから目を離すんじゃないぞ!」
リコ、マシンガンを構えなおす。
リコ「大丈夫よ(カズオたちへ)さあ!ペチャクチャ話してないで背中向きになるのよ!」
カズオと隊員とを、互いに背中向きに座らせ縄で手首を縛る部下CとD。
〇森の奥
暗視ゴーグルをつけた米軍の10名ほどの偵察隊が周りを警戒しながらやって
くる。
〇古代遺跡の広間
部下A、BとC、Dが二人一組で黄金の入った箱を運んでくる。
すでに穴の前に4箱積まれている。
永倉「それで全部か?」
部下A「はい!」
部下B「でも、どうやって運びますかね」
永倉、穴を覗き、中に入る。
〇穴の中
部下Bも覗き込んでくる。
永倉「だいぶ穴が大きくなっているな。お前!車からロープを取って来い」
部下B「わかりました」
永倉、部下Bの背中を軽く叩き見送る。
中腰で登ってゆく部下B。
〇黄金の間
しきりに広間の方を気にしているリコ。
カズオ「置いてきぼりにされるんじゃないか心配だよな、リコ」
リコ「うるさいわね!」
カズオ「うまくこの遺跡から運び出しても基地の森の中をさ迷った挙句、アメリカ軍に捕
まって没収されるのがおちだぞ!リコ」
リコ「黙れ!」
カズオ「奴らはもう、任務を放棄してるとしか思えない。今や金の亡者だ!口封じにお前
も俺たちと一緒に殺されるぞ」
リコ「・・・」
〇森の奥の奥
バスの周りを警戒する米軍兵士たち。
兵士、バスの中から降りて来て将校に報告する。
兵士A「中には誰もいません」
将校「車を捨てて、どこに行ったんだ?」
〇洞窟の中
永倉の部下B、地面に杭を打ちそこへロープを繋ぎ次にロープを穴のところま
で引いて行き、穴の中へロープを垂らしてゆく。
〇古代遺跡の広間
永倉の部下C、Dがロープを手繰り寄せ箱に巻き付ける。
部下C、ロープを2度引っ張り叫ぶ。
部下C「いいぞ!上げてくれ!」
永倉「(Cへ)一緒に上へ行け」
部下C「はい」
部下C、穴の中に入り箱を押すようにして登ってゆく。
〇滝の上
アメリカ兵がやってきて立ち止まる先頭の大尉と兵士。
兵士A「大尉!こんなところに滝なんてありましたっけ?」
大尉「いいや・・・しかしここは沖縄だ。突然新しい滝が出現してもおかしくはない」
兵士A「はあ?(まじまじと顔を見る)」
〇古代遺跡の広間
永倉の部下D、最後の箱にロープをかけ、ロープを2度引っ張る。
部下D「いいぞ!」
箱が持ち上げられてゆく。
永倉「(部下Dへ)よし、行け!」
リコ走ってくる。
リコ「キャップ!」
永倉「(振り向き)リコ、合図するまでお前は奴らを見張ってるんだ」
リコ「でも!」
永倉「早く戻れ!宝物を車に積んだら呼びに来るからそれまで奴らを監視してるんだ!」
リコ「分かりました」
渋々黄金の間に戻って行くリコ。
〇黄金の間
戻って来るリコ。
カズオが、リコにあわれ味の色を浮かべ見つめる。
カズオ「どうやら、振られたようだな」
リコ「心配ご無用、あんたとはお別れよ」
〇洞窟内
永倉、穴から出てくる。
永倉「さあ、早くお宝を車に運んじまおう」
部下たち「おーし!」
二人一組になり、それぞれ両手で二つの箱をもって歩き出す。
〇滝の前
周りを捜索している兵士たち。
大尉、のんびり辺りを見渡している。
滝の裏から永倉が出てくる。
大尉と永倉の目が合う。
永倉「チッ!」
永倉、ビクッとして滝の裏に逃げ込む。
大尉、銃を構えて
大尉「おい、お前!手を挙げてこっちへ来い!」
兵士A「滝の裏に逃げたぞ!」
一斉に滝に向かって銃を向ける兵士たち。
〇洞窟内
後ずさりしてくる永倉。
永倉「まずい、アメリカ軍に見つかった」
部下A「えっ?」
思わず箱から手を放す。
箱が壊れ中の宝物が床に散らばる。
部下A「ああっ!・・・」
カーッとしてマシンガンをつかみ飛び出す部下A。
永倉「おい!待て!」
〇滝の入口
部下A「お前らには渡さねえ!これでもくらえ!」
滝の入り口へ出て、めくら滅法にマシンガンを撃つ部下A。
〇滝の前
正面にいる大尉と兵士たち、地面に伏せる。
両側の兵士、応射する。
部下A倒れる。
滝の入り口に殺到する兵士たち。
〇洞窟内
3人の部下が隠れている箱の後ろに戻ってくる永倉。
永倉「来るぞ!応戦するんだ!」
入り口に銃を撃つ部下B。
米軍兵士、岩陰から応戦する。
天井と床にひびが入ってくる。
大尉off「撃ち方止め!止めるんだ!」
兵士たちの射撃が止まる。
永倉たちも怪訝な顔で打つのをやめる。
大尉off「俺たちはアメリカ軍だ!ここはアメリカ軍の基地内である!我々は許可なし
で入ってきたお前たちを逮捕しなければならないが、おとなしく投降するなら、
命の保証はする!すぐに武器を捨て出てきなさい!」
天井から土がこぼれ落ちてくる。
永倉「(部下と顔を見合わせ)分かった!今出て行く!」
立ち上がった瞬間、天井から土が落ちてくる。
永倉「なんだ?」
部下たち「うわあ!」
地面が崩れ落ち、3人の部下が箱と共に吸い込まれて行く。
永倉「あ~っ!?」
永倉の体も崩れ落ちる土砂に巻き込まれ落ちてゆく。
〇黄金の間
銃声の音に広間へ走るリコ。
地揺れが起こり、壁にひび割れが走る。
カズオ「これはやばいぞ」
一同、立ち上がり真ん中に固まる。
各国代表団にも動揺が起き、悲鳴が巻き起こる。
〇古代遺跡の広間
轟音と共に、土の塊が落ちてきて銅像を倒す。
〇黄金の間
リコ、走ってくる。
リコ「天井が!・・・地面が!沈んでく!」
天井から土が落ちて来て入り口付近でリコの全身を阻む。
カズオ「(叫ぶ)リコ!」
激しく首をふるリコ。
地揺れが激しくなり、代表団から悲鳴が上がる。
リコの後方で、砂や黄金の箱と共に永倉たちが落ちてゆく。
広間が土に埋もれ、黄金の間の入り口を埋めてしまう。
土をかぶり足を取られ動けなくなるリコ。
代表団「閉じ込められてしまったぞ!」
その時、奥の壁が崩れ、ぽっかり穴が開く。
隊員A「通路だ!」
カズオ「こっちだ!みんなこっちに移るんだ!」
カズオと3名の隊員で、代表団を穴の中に移動させる。
その間にも天井から土が崩れ落ちてくる。
体の半分が埋まっているリコが叫んでいる。
カズオ「(隊員Bに)先に行っててくれ!」
隊員B「床にひび割れが!」
カズオ「すぐ追いかける!」
カズオ、リコのところへ走る。
リコ「助けてぇ!」
カズオ「しっかり握るんだ!」
床のあちこちに割れ目が広がってゆく。
カズオ、リコの手を掴み引っ張る。
リコ「ダメ!靴が引っかかって抜けない!」
カズオ「くそっ!靴を脱ぐんだ!」
リコ「抜けない!無理!」
カズオ「抜くんだ!がんばれ!」
カズオ、リコの背中に腕を回して引っ張る。
リコ「ん~!・・・抜けた!」
リコの体が土の中から抜け出て、カズオと抱き合ったまま転がる。
リコが抜け出た場所に土の塊がどしんと落ち、床の割れ目が広がり土が吸い込
まれて行く。
カズオ「急げ!」
カズオ、リコの手を引いて空洞に飛び込む。
その瞬間、黄金の間の天井が崩れ落ちて来て、ひび割れた穴の中に吸い込まれ
て行く。
〇滝の前
激しく地面が揺れ、轟音が響く。
兵士たちが滝の入り口から逃げてくる。
滝の上の地面が崩れ、陥没して滝つぼが埋まり、なだらかな坂になり、煙が濛々
と巻き上がっている。
新たに川の流れが作られ、兵士たちの前を流れてゆく。
兵士A「全く・・・天地創造に出くわしたようだ」
大尉「諸君!これが沖縄の大自然の驚異だよ」
〇沖縄近海(夜)
自衛隊の駆逐艦、輸送艦が白波を駆ってゆく。
ダブって、首相官邸の中で叫ぶ首相。
首相「もう、これ以上は我慢出来ん!さっさと自衛隊を沖縄に向かわせるんだ!」
〇地下洞窟
カズオと隊員、リコ、各国代表団が暗闇の中、手探りで坂を登り歩いている。
行く先のほうに薄明かりが見えてくる。
リコ「何かこの先、明るくなってる」
隊員D「きっと出口だ!」
ブラジル代表団「我々は助かるのか?」
カズオ「ああ、もうすぐ出口だ」
リコ「でも、基地の外に出れるかしら?」
カズオ「どっちにしろ、行くしかないさ」
〇民家風そば屋・店内
軍服姿の安芸津、入ってくる。
店主風の格好の国吉が待っている。
国吉「安芸津大尉!お待ちしてました」
安芸津「国吉軍曹、様子はどうだ?」
国吉「ものすごい地鳴りで、山が崩れて無くなってしまいました。黄金の間も崩壊してし
まった思われます」
安芸津「うむ、とにかく様子を見に行こう」
〇洞窟内・出口
喜び勇んでやってきたカズオたちと代表団一同が鉄格子に遮られて、がっくり
と肩を落とす。
鉄格子の先のドアの窓から明かりが漏れている。
リコ「ドアがあるわ!?」
隊員A、鉄格子を掴んで激しく揺する。
隊員A「おーい! 誰か!・・・誰か返事をしてくれ!」
カズオ「・・・」
〇民家風そば屋・店内
国吉、階段の下の壁のスイッチを押すと壁が横にスライドして明かりの点いた
部屋が現れる
国吉と安芸津、正面のドアに近づく。
慌ててドアの窓から身を隠す国吉。
国吉「大尉!誰かいます!」
安芸津「何?!」
安芸津も窓から離れる。
安芸津「この場所は誰も知らないはずだ」
国吉「どこから入り込んだんでしょう?」
安芸津「遺跡泥棒か?・・・電気を消せ」
国吉、壁のスイッチをOffにする。
安芸津、真っ暗な中静かにドアを開け、洞窟に飛び込み腰を落として鉄格子に
向かって銃を構える。
〇洞窟内・出口
カズオ、リコ、隊員、代表団の数名が鉄格子を掴み、すがる様にドアの窓を見
つめている。
すると、突然明かりが消え暗闇の中、ドアが開いて何者かが飛び込んでくる。
安芸津「動くんじゃないぞ!お前らを俺の銃が狙ってるからな」
リコ「日本語よ!味方よ」
カズオ「撃たないでくれ!武器は持ってない!」
安芸津「お前らは何者だ!」
カズオ「ここにいるのは沖縄独立署名式に出席する各国の代表団のお歴々と警護の者たち
だ」
安芸津「何だと?代表団がこんなところにいる訳ないだろう!いや、待て。軍曹!明かり
を点けるんだ!」
部屋が明るくなり、まぶしさと安芸津の構える銃にうろたえるカズオたち。
国吉、銃を構えて入ってくる。
安芸津「あんたがたは、この洞窟に一体どこから入った」
カズオ「いや、入ったという事ではなくて、吸い込まれてしまったような訳で(やっと目
が慣れ安芸津を見つめて)安芸津?・・・安芸津!俺だ!ほら、フィリピンで一緒
に訓練受けた、屋良カズオだよ!」
安芸津「屋良?・・(顔を向け)なんだカズオじゃないか !こんなところで何やってる
んだよ!」
カズオ「とにかくここを開けてくれないか」
安芸津「あ、ああ!・・軍曹!開けてやってくれ」
国吉、ポケットからカギを取り出し鉄格子を開ける。
ぞろぞろ出てくる一同。
〇民家風そば屋・テーブル席
国吉、雑多にテーブルに着いた代表団にそばを配ってゆく。
安芸津、カズオ、リコ、厨房の前のカウンターで立話をしている。
カズオ「我々が見たあの遺跡はお前たちも知っているんだな?」
安芸津「広間で何か見たか?」
リコ「すごい財宝があったわ」
安芸津「(焦って)それで?・・・どうした」
リコ「でも遺跡も財宝も地下深くに沈んでしまった」
安芸津「埋もれてしまったか・・・・」
カズオ「あの財宝をお前ら知っているのか?」
安芸津「まあ・・・いい(呟く)もう一カ所残っている」
カズオ「とにかく代表団の方々を安全なところに移動させるのが先決だ!バスはあるか?」
安芸津「トラックなら用意出来る」
〇沖縄辺戸岬
ホバークラフトで上陸する自衛隊員。
ジープ、駆動車、トラック、戦車が陸揚げされる。
ジープに乗った指揮官、行進を始める隊員に向かって語り掛ける。
指揮官「いいか!あくまでも我々の任務は捕らわれた沖縄駐留の隊員の救助だ!それを忘
れるな」
〇道路
自衛隊のジープとトラックの編隊が走ってゆく。
上空にはヘリの編隊。
〇米軍司令基地
司令官室に将校が緊張して入ってくる。
将校「失礼します」
司令官「?どうした」
将校「先ほど日本軍が沖縄に上陸、那覇に向かって進軍中であります」
司令官「日本は沖縄を敵国とみなしたわけか?」
将校「詳細はまだわかっておりません」
司令官「よろしい、下がれ」
将校「はい!」
将校、部屋を出る。
司令官「ふん、日本軍に何が出来る?(興奮で身振りが大げさになってくる)こうなった
ら日本軍も沖縄軍も!ぶっ潰してやる! 俺様が沖縄の王になるんだ!」
〇那覇市街
カズオや代表団を乗せた3台の幌付きトラックが猛スピードで走っている。
〇トラックの荷台
代表団に交じってリコは手錠で鉄棒に繋がれている。
〇トラックの運転席
兵士が運転、カズオと安芸津が助手席に座っている。
安芸津無線機を下ろす。
安芸津「自衛隊が上陸したらしい(運転手へ)首里城の司令部に向かうぞ」
カズオ「何だって?!代表団の安全は確保できるのか?」
安芸津「こうなったら、安全な所なんて何処にもない!」
〇陸上自衛隊基地・正門
通路に土嚢が詰まれ、防衛隊の兵士が銃口を外に向けて警戒している。
その後ろには戦車が待機している。
〇同・食堂
自衛隊員と沖縄防衛軍兵士が向き合ってカレーライスを食べて談笑している。
自衛隊員が慌てて入ってくる。
隊員A「来たゾ!」
防衛軍兵士「何が来たんだって?」
隊員A「自衛隊だよ!」
〇同・正門
自衛隊の装甲車、トラックが到着。
自衛隊員がトラックから降りて車両の陰に隠れ配備につく。
隊長が立ち上がり拡声器で呼びかける。
隊長「自衛隊基地を占拠しているテロリスト!失礼!興奮のあまり不適切な言葉を発して
しまった。えー、沖縄の暴動集団諸君!速やかに自衛隊員を開放してくれたまえ!」
装甲車から通信兵が走ってきて、隊長にイヤホンを渡す。
通信兵「隊長!兵舎内から通信です!」
隊長「隊長の中島だ!中の状況を教えてくれ・・・何?お前!本気で言ってるのか!?」
〇沖縄県庁・ロビー
照屋大統領がジッと外を見つめている。
米国大使と十数名の護衛の兵士が入ってくる。
照屋「おや?・・大使ではないですか!東京からこんな遠いところまで、よくいらっしゃ
いました」
大使「お宅の軍隊など、蹴散らすのは簡単だ。それよりここに来るまでに私がどれほど屈
辱的な扱いを受けて来たことか」
照屋「失礼があったら謝ります。我々は大使にも、アメリカにたてつく気はこれほども思
っていません」
大使「知事、我々の我慢のほどにも限界がある」
照屋「私は大統領です!ホワイトハウスの主は我々の戦いを理解してくれてるはずですが」
大使「Mr県知事! 私はそんな事、これっぽっちも聞いてないぞ」
〇陸上自衛隊基地・無線室
自衛隊員、基地を包囲している部隊と連絡している。
隊員A「「だから、我々は捕虜になっているわけではないんです」
隊長の声「おまえの言ってる事は訳が分からん!お前は本当に自衛隊員なのか?」
隊員A「これから出て行って説明しますから、すこし待って下さい」
急いで部屋を出てゆく隊員を見送る沖縄兵士。
兵士「本土の連中にいくら話しても沖縄のことなんか分かる訳がないさ」
〇陸上自衛隊基地・正門
隊員Aが認識票を手かざして出てくる。
隊員A「隊長殿!まぎれもなくわたくしの認識票であります」
スポットライトがたかれ、隊員Aの姿が浮かび上がる。
隊長、装甲車の陰から出てくる。
隊長「わかった!本物と認めよう、こっちへ来い!」
隊長の後について装甲車の陰に行く隊員A。
土嚢から見守る沖縄防衛軍兵士。
手を振って出てくる隊員A。
其の後から銃を肩に掛け、ぞろぞろ出てくる自衛隊員。
〇首里城公園
幌付きトラックが防衛軍本部へ向かって走っている。
〇米軍司令部
司令官が電話口で激怒している。
司令官「艦長!何をぐずぐずしてるんだ!さっさと首里城を砲撃するんだ!」
受話器を乱暴に置く。
〇海
数隻の艦艇の砲撃が始まる。
〇首里城
砲撃で門の壁や建物の壁が崩れ落ちる。
城の中に入ろうとしているトラックの群れの横、後ろ、前方に砲弾が炸裂する。
〇トラックの運転席
必死でハンドルを操作するカズオ、助手席の安芸津が左右に大きく振られる。
安芸津「相変わらずへたくそな運転だな!チクショウ!自衛隊はここまでやるのか!」
カズオ「日本はほんとに我々と戦争するつもりなのか?」
〇同・荷台
大きな揺れに縁にしがみつく体を大きく振られている代表団。
手錠に繋がれたリコの体が大きく揺れ、手首に血が滲んでくる。
リコ「痛!もう!しんじらんない!」
〇同・内
砲弾の直撃を受けて建物の壁が崩れる。
逃げ惑う兵士たち。
砲弾に吹っ飛ぶ兵士。
〇県庁・ロビー
すさまじい砲撃の音に、全員、窓辺に集まり首里城のほうを見つめる。
呆然とする照屋大統領。
照屋「アメリカ大統領が約束を破った?・・(大使に)世界中の国々と対話をして理解を
得ようとしている我々をアメリカは野蛮にも大砲で、押しつぶすつもりか・・・あれ
ほど約束したのに」
後ろで大尉が押し黙っている。
兵士の一人、泣き顔で呟く。
兵士「一週間前に子供と一緒に行ったばかりなのに」
大尉「それがなんだ、俺に何が出来るというんだ!」
大使「信じられん。こんな命令を大統領が出すとは」
照屋「よろしい、我々の軍隊は世界数十ヵ国の若者の志願者が集まったものだ。この若者
たちを殺せば、アメリカはアルカイダだけじゃなく世界中の国を敵に回すことになる
ぞ。いかにアメリカが強大な国でも、世界中から攻撃の的にされるぞ」
大使「何かの間違いだ。そうとしか考えられん」
〇首里城内
砲撃にさらされながら、防空壕へ入ってゆく幌付きトラックの群れ
>〇同・防空壕の中
数十名の兵士が待機している。
安芸津、代表団をトラックから降ろす。
カズオ、リコの手錠を外して下す。
安芸津「自衛隊はどこから砲撃してるんだ?」
軍曹「砲撃は米軍の艦砲射撃です!海兵隊が攻め込んで来ます!」
安芸津「米軍だと?」
カズオ「アメリカは中立のはずだ!」
安芸津「(兵士へ)とにかく代表団を地下壕へ移動させるんだ!」
軍曹「分かりました!(兵士に)お前!案内しろ!」」
兵士「はい!」
兵士が先頭に立ち代表団を案内してゆく。
〇琉球皇国塾
凄まじい爆撃音に部屋中が振動する。
数名の塾生が飛び込んで来る。
塾生A「塾長!アメリカ軍の砲撃が始まりました!」
塾長、窓にしがみつき外を見つめている。
塾長「なんて奴らだ!城をブッ壊してやがる」
砲撃で石垣の岩が破壊され、砂煙に包まれる首里城。
塾長の手がぶるぶると震えている。
塾長「クソアメリカ軍から城を守らなきゃいかん!」
塾生A「で、でも、どうやって?」
塾生B「アメリカ軍は友軍ですよ」
塾長「城を潰そうとするやつは、誰だろうと許さん!」
塾生たち、顔を見合わせる。
塾長「行くぞ!」
塾生たち「は、はい」
塾長に続いて飛び出す塾生たち。
〇首里城公園の外
数十台の戦車が首里城めがけて三方から侵入して来て整列して止まる。
戦車の頭上を艦砲射撃の砲弾が飛んで行く。p>
〇首里城・防空壕の中
カズオ「リコ!地下壕へ行くんだ!」
リコ「私も戦う!」
カズオ「ダメだ!」
安芸津「(軍曹に)手間を取らせたな」
軍曹「いえ!(部下たちへ)お前たち!行くぞ!」
兵士たち「はい!」
軍曹と兵士が外に飛び出してゆく。
カズオ「リコ!頼むから言う事聞いてくれ!」
リコ「いやよ!」
安芸津「カズオ!行くぞ!」
カズオ「オウッ!」
安芸津「こっちだ!」
カズオ、リコの肩をポンと押して、安芸津の後を追う。
奥のドアを開けて、中に入って行く安芸津とカズオ。
リコ走って来て、閉まったドアをそっと開け中を覗く。p>
〇首里城公園
艦砲射撃が止み、戦車と米海兵隊の攻撃が始まる。
土嚢を盾に待ち構える防衛軍兵士。
砲撃しながら進む戦車。
機銃と対戦車砲で応戦する防衛軍。
戦車が対戦車砲の直撃を受け大破する。
戦車から逃げる米兵士。
一台の戦車が向きを変え砲撃する。
土嚢を吹き飛ばされ、防衛軍兵士が吹っ飛ばされる。
防衛軍隊長「退却!石垣まで退却だ!」
海兵隊、戦車の後ろから横に散らばり射撃を始める。
土嚢から後退する防衛隊兵士。
砲弾や銃弾に倒れる防衛軍兵士。
走りながら、叫ぶ隊長。
防衛軍隊長「止まるな!走れ!走るんだ!」
石垣の上から援護射撃する防衛軍。
迫ってくる戦車と海兵隊。
石垣の横から海兵隊めがけて走ってくる1台の琉球皇国塾の街宣車。
防衛隊と海兵隊の間を走行しながら、海兵隊を銃撃する。
次々と防衛隊兵士が石垣の裏に飛び込む。
後輪の近くに戦車の砲撃が直撃、街宣車が一回転する。p>
〇街宣車・車内
後ろ席の男2人が砲撃の破片が当たり血だらけで倒れている。
運転席の横の座席に這いつくばっている塾長。
運転手、シートベルトを外し、後ろの席に移動する。
運転手「クソッ!殺ってやる!」
後部ドアを開け、機銃を撃ち始める運転手。
近寄って来た海兵隊に銃撃されハチの巣になる運転手。
塾長「この!くそが!」
座席の陰から機銃を撃つ塾長。
海兵隊員が街宣車に手榴弾を投げつける。
転がって車の外に出る塾長。
爆発する車。
〇石垣の裏
続々と転がり込んでくる防衛隊の兵士たち。
塾長が転がり込んで来る。
黒人兵士「大丈夫か?おかげで命拾いした!ありがとよ!」
塾長「まだ、助かったとは言えねえぞ!ン?黒人がなんで防衛隊に?」
黒人兵士「ボランティアさ。助けを求めているなら協力するのは人間として当然だろ」
笑顔でウィンクする兵士
塾長「命がけのボランティアってか!頭おかしいんじゃ無えのか?」
〇首里城・外
戦車が城に砲撃しながら、前進して来る。
〇首里城・内
砲撃に吹き飛ばされる建物、車両、兵士たち。
〇防空壕・車庫
装甲車のような車に乗り込もうとしている安芸津とカズオ。
そ~っと後ろに近づいているリコ。
安芸津「試作品だが、なかなかの物だぞ!運転席に着いたらヘルメットをかぶり俺の指示
通りに動いてくれ!」
カズオ「分かった!」
先に走って車に乗り込むリコ。
カズオ「アッ!リコ!?ダメだ!下りるんだ!」
ヘルメットを装着するリコ。
安芸津「早くしろ!味方が殺られてるんだ!」
リコ「大尉!指示して!」
安芸津、カズオの顔を見る。
リコ「早くして!」
安芸津「いいのか?命の保証は無いぞ!」
リコ「了解よ!急いで!」
安芸津「分かった!カズオは一番奥の車に乗って来れ!」
カズオ「クソッ!」
奥へ走るカズオ。
真ん中の装甲車に走り、飛び乗る安芸津。
カズオ、ヘルメットをつける。
カズオ「いつでもいいぞ!」
安芸津「発進!」
3台の装甲車が勢いよく発進してゆく。
〇防空壕・入口
扉が開いて、安芸津、カズオ、リコの乗った装甲車が走り出てくる。
〇米軍戦車の中
戦車兵「何だ!?あれは!」
戦車長「何でもいい!とにかく撃ちまくれ!」
〇首里城・外
戦車の砲塔が回り、装甲車に向けて砲撃開始。
砲撃をかわして走る3台の車。
安芸津「赤いボタンを押して!MAXワン!」
カズオ「ツー!」
リコ「スリー!」
車から翼が出てきて、空中に舞い上がる3台の装甲車
驚き、空を見上げる海兵隊兵士
戦車の機銃掃射が空へ向けて銃撃を始める
〇石垣の裏
砲撃や機銃の音がするも、着弾がやんでいる。
防衛軍隊長、石垣から恐る恐る顔を出す。
隊長「何があったんだ?」
見渡すと、戦車の機銃が空に向けて撃っているのが見える。
隊長「あっ?!」
空を見上げると、装甲車が上昇している。
〇空
翼のついた車が、変型し始めている
〇運転席
カズオ「ウワア!安芸津!これどうなってんの?!」
リコ「カズオ!今更ビビってんじゃ無いわよ!」
安芸津「新兵器のシーサーロボットさ!合体するぞ!エイサ―!」
カズオ「エエッ!」
リコ「エイサー!」
〇空
ロボットの一部に変型した3台の車が、縄の様によじれながら上昇して行く
金属と金属がぶつかり合い激しい火花を発し、ついに炎に包まれる3台の変型
車。
炎が周囲に拡散、消えるとシーサー型のロボットが現れるp>
〇首里城・外
上空から米軍の戦車めがけて、急降下して来るシーサーロボット。
戦車長「何だ?カミカゼだ!撃て!撃て!撃ちまくれ!」
恐怖で錯乱する戦車長。
機銃が集中攻撃。
数台の戦車は、バックして後ろを窪地に入れ、砲身を空に向け砲撃。
機銃の弾丸が、シーサーロボットに当たって跳ね返される。
戦車からの砲撃がシーサーロボットをかすめる。
旋回して上空に逃げるシーサーロボット。
〇シーサーロボットの操縦席
安芸津「戦車の砲塔を壊して砲撃出来なくするんだ」
カズオ「こっちの武器は?」
安芸津「無い!腕力だけだ!」
リコ「あきれた!このシーサーロボットは不死身って訳ね?」
安芸津「いや!砲撃が当たれば木っ端みじんだ!」
リコの直ぐ近くで砲弾が爆発して、操縦席が激しく揺れる。
リコ「今!砲撃されてんのよ!」
安芸津「だから必死で避けている」
カズオ「おい!おい!冗談だろ!」
〇上空
首里城の上空から海へ向かうシーサーロボット
〇シーサーロボットの操縦席
リコ「今度は何処へ行く気なの!」
安芸津「任せろって!」
いきなり反転して急降下するシーサーロボット。
カズオ「ウワア!海へ突っ込むぞ!」
海面すれすれで水平飛行二移るシーサーロボット。
安芸津「反撃開始だ!」
〇海岸線
地面すれすれで首里城を囲む戦車群に向かうシーサーロボット。
〇首里城・外
戦車群の砲塔が一回転して、海岸の方に向く。
シーサーロボットが地面すれすれに飛んで向ってくる。
戦車長「一斉射撃用意!ーー撃て!」
戦車群の砲塔が一斉に火を吹く。
体をねじって砲撃をかわして戦車に突進するシーサーロボット。
砲撃が途切れた瞬間、急上昇し戦車の上に飛び下り砲身を捻じ曲げる。
〇シーサーロボットの操縦席
カズオ「恐ろしい腕の力」
安芸津「腕自慢だけじゃ無いぜ」
シーサーロボット、軽々とジャンプして離れた戦車に飛び移る」
リコ「義経の八艘跳びネ」
〇首里城・外
次々と戦車の方針を捻じ曲げてゆくシーサーロボット。
一人の米兵が、対戦車砲を担いで照準をシーサーロボットに合わせる。
米兵「キモチの悪い鉄の塊メ!これで見納めだ!」
〇シーサーロボットの操縦席
リコ「ヤバい!右よ!」
安芸津「何!?」
米兵の指が引き金を引く。
砲弾が戦車の砲塔の上に居るシーサーロボットに命中?。
安芸津、カズオ、リコ「(悲鳴)ア~ッ!」
〇首里城・外
砲塔が爆発!瞬間、吹っ飛ぶシーサーロボット。
米兵「やったぞ!」
砲塔が粉々になったのを見て、戦車に向かって走る米兵。
壊れた戦車の周りを取り囲む米兵。
米兵「クソ!逃げられた!」
〇首里城・外
戦車群の外に倒れているシーサーロボット。
〇シーサーロボットの操縦席
気を失っていた安芸津、カズオ、リコが眼を覚まし顔を上げる。
安芸津「フー、みんな無事か?」
カズオ「ああ、何とか生きてるようだ」
リコ「ロボットは動けるの?」
安芸津、モニターを見てキーボードを操作している。
安芸津「何とか戦えそうだ」
戦車が咆哮を変え、米兵を従えて向ってくる。
カズオ「休んでる時間は無さそうだ!」
〇首里城・外
戦車の一斉砲撃と同時に、シーサーロボットがジャンプ。
三段跳びで戦車の後ろに着地、1台の戦車の砲塔に上り砲身を捻じ曲げて、戦
車の真ん前に飛び降りる。
〇戦車の中
驚く操縦兵
操縦兵「ワッ!この野郎!どてっぱらに撃ち込んでやれ!」
〇首里城・外
戦車の砲塔が回り、正面を向くと砲身が斜めに曲がっている。
戦車長(OFF)「撃て!」
腰を折ってお辞儀をするシーサーロボット。
飛び出る砲弾。
味方の戦車に直撃する砲弾。
爆発する被弾した戦車。
別の戦車に飛び付くシーサーロボット。
右往左往する戦車群。
戦車長(OFF)「一体どうなってるんだ!? 敵は何処だ!?」
〇県庁・執務室
大使「わかりました。速やかに事態を収拾いたします」
大使、受話器を置いて
大使「沖縄総司令官の暴走だ。今MPと陸軍部隊が逮捕に向かっている」
照屋「大統領の命令はなかったんですね・・・」
椅子にへたり込む照屋
〇首里城・外
最後の戦車の砲身を捻じ曲げたシーサーロボットが吠える。
あちこちの咆哮を向いて止まっている戦車群。
〇シーサーロボットの操縦席
安芸津「分かりました。戦闘中止します」
リコ「城内に助けには行かないの?」
安芸津「安芸津!どういうことだ?」
安芸津「アメリカ軍は敵ではない。将軍の暴走だ!アメリカ大統領が戦闘中止命令を出し
たんだ」
飛び立つシーサーロボット
〇米軍沖縄司令部
米軍MP部隊が入ってくる
MP「司令官殿、残念ですがあなたを逮捕します」
司令官「お前がこの俺を、司令官を逮捕するって?」
MP「総司令官からの命令であります」
司令官「お前らはウソの命令に騙されてる」
MP「閣下!おとなしくご同行願います」
MPの部下たちが司令官の両脇に立つ観念する司令官
部下のMPが司令官の腕をつかむ
司令官「触るんじゃない!」
〇首里城
米海兵隊が外側の石垣に張り付いて突入の機会を伺っている
戦車が近づいてきて石垣の入り口を砲撃する
銃を乱射しながら、石垣の階段を上って門の中に突入する米海兵隊
石壁や頭の陰から応射する人種混合の沖縄防衛隊
〇首里城公園
数十台もの戦車と装甲車が首里城めがけて四方から侵入してくる
〇首里城
石垣の周りを取り囲む戦車と装甲車
スピーカー「沖縄防衛軍の皆様及び米海兵隊諸君!直ちに戦闘を中止せよ!」
〇装甲車の中
必死に無線で戦闘中の部隊に連絡を取ろうとしている通信兵
通信兵「だめです!無線が通じません!」
中佐「戦車部隊と連絡取れ!」
通信兵「はい!こちら司令部!第一機動隊!応答せよ・・中佐!繋がりました!」
中佐、マイクを受け取り
中佐「戦車隊を発進させろ!」
〇首里城内
門をくぐってきた戦車が現れると、大喜びする海兵隊
戦車が海兵隊に向きを変える
〇同・石垣
中へ突入しようとする海兵隊の前に戦車が機銃掃射する
慌てて下がる兵士たち
指揮官「バカ!何やってんだ!てめえらは見方を殺す気か?」
兵士が一人転がってくる
部下「中尉!外でスピーカーが戦闘中止と!」
指揮官「なに!?」
〇石垣高台
沖縄防衛軍が物陰から下を見下ろしている
兵士1「あいつら同士討ちしてるぜ。米軍内部の反乱か?」
兵士2「一体、どうなってるんだ?」
〇同・門の前
装甲車から降りてきた陸軍兵に囲まれて、無線で連絡を取る海兵隊の通信兵
通信兵「戦闘中止!直ちに戦闘中止せよ!聞こえたものから返答せよ」
〇首里城
戦車の後ろについて首里城の外に出てゆく海兵隊
登ってくる安芸津とカズオ
狐につままれた様な顔で見送っている防衛軍の兵士たち
海兵隊の姿が見えなくなる
兵士1「やったぜ!」
兵士2「沖縄を守ったぞ!」
防衛隊兵士同士で飛び上がってハイタッチして喜ぶ
カズオ、ホッとため息をつく
安芸津、カズオの肩に手を置いて
安芸津「終わったな」
〇嘉手納基地司令部
沖縄大統領とアメリカ大使、日本外務大臣が順番に書類にサインをして行く
笑顔で握手をする沖縄大統領とアメリカ大使
苦虫をかみつぶして日本外務大臣が退席する
〇県庁前広場
入り口に「沖縄超特別自治県宣言式典」の垂れ幕がかかっている
三線と太鼓がかき鳴らされ、あちこちで人々がカチャーシーを踊っている
壇の前で警備をするカズオ
大勢の人々が集まり、壇上には各国代表団が並んでいる
司会者「わが沖縄の独立に賛同!身の危険も顧みず強力にバックアップしてくれた国々の
代表のみなさんです。盛大な拍手をどうぞ!」
立ち上がる代表団
盛大な拍手が起こり、数名の踊り子たちが壇の上に登ってくる
踊り子「皆さんも沖縄の祝いの踊りをご一緒にどうぞ!ア、イヤサー 」
と、代表団の手を取り、踊りだす
誰もかれもがカチャーシーの踊りで喜びを爆発させる
〇県庁・執務室
照屋、ほくそ笑みTVを見ている
TV画面にはオリンピック開会式が盛大に行われている
〇各地の米軍基地
数か所の基地から戦車やトラックが出て行く
解体される兵舎
〇沖縄県議会
照屋沖縄県知事が演説している
県知事「沖縄の要望に対しアメリカは真摯に直接対話をする事。米軍基地はミサイル基地
のみを残す事で正式に調印したところです」
与党席から盛大な拍手が起こる。
県知事「沖縄は今まで通り日本に帰属しますが、代わりに超特別県となり、独立自治権と
沖縄独自の通商活動を行う権利を獲得しました。
我々には古代の王たちが莫大な金銀を残してくれました。我々はこの財産を有効に使
わなければなりません。今後、日本本土および外国との取引は金で行うこととするの
で、株価に一喜一憂することなく安定的な財政状態を保つことが可能になります」
与野党議員全員が立ち上がり拍手をする
笑顔で顔を見合わせる与野党議員たち
〇沖縄警察玄関
カズオ、反対側の歩道の並木に寄りかかって待っている
リコ出てくる
カズオ、道路を横切り、リコのもとに駆け寄りハグする
リコ「晴れて釈放よ!」
カズオ「よかった!改めて沖縄へようこそ!」
リコ「お腹ペコペコ!」
カズオ「それじゃ、沖縄で一番うまい宮廷料理を食べに行こう」
カズオ、リコの背中を抱いて道路を渡る
〇レストラン・店内
カズオとリコ、店員に案内されて席に着く
リコ「ちょっと、お手洗いに行ってくる」
カズオ、席を立ってゆくリコを見送り、何気なく外を見ると景色が渋谷駅の街並みに
変わり、空の色が青くなっている
リコ、戻ってくる
リコ「お待たせ!」
カズオの座っている席に声をかけるが席には誰も居ない
リコ「えっ?(周りを見渡し)カズオ?」
〇店内・バーチャルゲームの座席
カズオ、ばっと起き上がりゴーグルを外す
モニターに女の子が現れる
女の子「御眼ざめですか?」
カズオ「えっ!ここは?・・・ああ~、ほんとの体験じゃなかったのか」
女の子「ふふふふ、!本当に体験して来たんですのよ」
カズオ「うそ~!」
女の子「このゲームはあなたの中の眠ってる夢が現実に体験できるマシンなの」
カズオ「えええっ?!じゃあ、じゃあ、あの時俺、死んでたかもしれなかったの?」
女の子「でも、夢のなかでは猛獣にかまれても裸で宇宙に飛び出しても決して死んだり
しないでしょ」
カズオ「そういえばそうだけど・・・・」
女の子「カズオさんがこの新マシンの初めてのお客さんなのよ。記念に今回のゲーム料
金はサービスとさせていただきますわ。又のご利用をお待ちしております」
○ビルの入り口
カズオ、出てくる
カズオ「え?」
見渡す先にゲームの中のレストランが建っている。
店内からはリコがこちらを見つめている。